TOP労務コラム法改正やルール変更のまとめ!人事労務担当者向け【2024年重要トピック】

法改正やルール変更のまとめ!人事労務担当者向け【2024年重要トピック】

髙木 涼太
2024.04.04

行政書士の髙木涼太(株式会社KiteRa)です。

社会保険労務士(株式会社KiteRa)の監修のもと、2024年に施行予定の法改正やルール変更の中から重要トピックを8個選びました。トピックごとに「改正の概要」や「人事労務担当者が対応すること」をご紹介していきます。

施行日改正内容対象事業者
4月1日①建設業・ドライバー・医師で時間外労働の上限規制の適用建設、運送、医療
4月1日②労働条件の明示ルールの変更全ての企業
4月1日③裁量労働制の導入‧継続に新たな手続きが追加裁量労働制を導入中、または導入予定の企業
4月1日④障がい者雇用率の引き上げ、短時間労働者である 障がい者の実雇用率における算定の変更全ての企業
6月⑤所得税と住民税の定額減税全ての企業
10月1日⑥短時間労働者に対する社会保険の適用拡大従業員が常時51人以上の企業
未定⑦フリーランス新法施行
未定⑧マイナンバーカードと健康保険証の一体化全ての企業
INDEX
  1. ①建設業・ドライバー・医師で時間外労働の上限規制の適用
  2. ②労働条件の明示ルールの変更
  3. ③裁量労働制の導入‧継続に新たな手続きが追加
  4. ④障がい者雇用率の引き上げ、短時間労働者である 障がい者の実雇用率における算定の変更
  5. ⑤所得税と住民税の定額減税
  6. ⑥短時間労働者に対する社会保険の適用拡大
  7. ⑦フリーランス新法施行
  8. ⑧マイナンバーカードと健康保険証の一体化
  9. 法改正以外の通常業務について
  10. まとめ

①建設業・ドライバー・医師で時間外労働の上限規制の適用

改正の概要

2019年4月1日働き方改革の一環として労働基準法が改正され、時間外労働に上限規制が適用されました。一方で建設業、自動車運転者(以下、「ドライバー」)、医業に従事する医師(以下、「医師」)、鹿児島県及び沖縄県での砂糖製造業においては、深刻な人材不足や業界的な問題により「時間外労働の上限規制」が適用猶予されておりました。2024年4月1日以降は、業種ごとの実情に合わせた「時間外労働の上限規制」が適用されます。

改正のポイント

建設業

改正前改正後
・時間外労働の上限規制の適用なし・時間外労働は原則 月45時間以内 年間360時間以内

・臨時的な特別の事情がある場合
①時間外労働が年720時間以内
②時間外労働と休⽇労働の合計が⽉100時間未満
③時間外労働と休日労働の合計について、「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」「6か月平均」が全て1か月当たり80時間以内
④時間外労働が⽉45時間を超えることができるのは、年6か⽉が限度

※災害時の復旧‧復興の事業については、②③の規制が適用されない。

 

ドライバー

改正前改正後
・時間外労働の上限規制の適用なし・時間外労働は原則 月45時間以内 年間360時間以内

・臨時的な特別の事情がある場合
①時間外労働が年960時間以内

医師

改正前改正後
・時間外労働の上限規制の適用なし・時間外労働は原則 月45時間以内 年間360時間以内

・臨時的な特別の事情がある場合
①時間外労働が年960時間以内※

※都道府県知事から特例⽔準の指定を受けることで、年960時間を超えた時間外‧休⽇労働を⾏うことが可能となる。
※水準の種類を問わず時間外‧休⽇労働時間の合計は「⽉100時間未満」となります。(ただし、原則として⽉100時間に達する前に医師による⾯接指導が⾏われ、健康確保措置を実施することを36協定に定めた場合は、時間外‧休⽇労働時間の合計を⽉100時間以上にすることが可能)

特例水準

医療機関に適用する水準年の上限時間
A・・・診療に従事するすべての医師(他の水準に当てはまらない医療機関)960時間
連携B・・・医師を派遣する病院1860時間(自院のみでは960時間)
B・・・救急医療等1860時間
C-1・・・臨床・専門研修1860時間
C-2・・・高度技能の習得研修1860時間

※医師全員に時間外・休日労働時間が月100時間以上になると見込まれる場合は医師による面接指導により健康状態を確認することが義務づけられています。

※連携B水準、B水準、C水準の場合は、勤務間インターバルの確保(例:始業から24時間以内に9時間の連続した休息を確保する等)を、医療機関の管理者へ義務づけることとした、追加的健康確保措置が規定されています。(A水準については、努力義務)

人事労務担当者が対応すること(建設、ドライバー、医師)

【1】 「時間外労働・休日労働に関する協定届」の様式変更

上限規制適用猶予の終了にともない2024年4月1日以降に締結する「時間外労働・休日労働に関する協定届」の様式が変更になります。自社に適用される様式を確認しましょう。

【2】 現状の労働時間の把握と業務効率化

上限規制が適用されることにより、今までのような無制限の法定時間外労働や休日労働が出来なくなります。

現状の働き方で、自社に適用される上限規制に対応できるか確認が必要です。もし上限を超過してしまう可能性があるなら新しく従業員を雇ったり、業務効率化のために作業手順改善やIT機器等の導入を検討した方が良いかもしれません。

【3】 法改正に関連する最新情報を確認

労働時間の上限規制以外にも各業種の法改正がございます。例えば運送業であれば「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」、医療業であれば医療法が改正されているなど、労働基準法以外にも注意が必要です。改正内容を理解しましょう。

導入の経緯や実務上の注意点などの詳細な情報は、下記にまとめています。あわせてご参考ください。

(関連記事)建設業の時間外労働上限規制とは?建設業界に強い行政書士が導入の経緯や注意点などを解説【2024年重要トピック】
(関連記事)運送業の時間外労働上限規制とは?社労士が導入の経緯や注意点などを解説【2024年重要トピック】
(関連記事)医師の時間外労働上限規制とは?導入の経緯や注意点などを解説 【2024年重要トピック】

②労働条件の明示ルールの変更

改正のポイント

2024年4月1 日以降に契約締結・契約更新をする労働者に対し、労働条件の明示事項が変更されます。多様な働き方を徹底するために「労働者から見た業務の仕方や持続可能性を向上させること」「職務内容や待遇を明確に認識できるようにすること」などを目的としています。新しく追加される明示事項は「就業場所・業務の変更範囲」「更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容」「無期転換申込機会の明示」「無期転換後の労働条件の明示」となります。求人募集時の記載内容にも、同様の内容を追加する必要があります。

改正のポイント

明示のタイミング追加される明示事項ポイント改正前
全ての労働契約の締結時と有期労働契約の更新時就業場所・業務の変更の範囲全ての労働契約の締結と有期労働契約の更新のタイミングごとに、「雇い入れ直後」の就業場所・業務の内容に加え、これらの「変更範囲」についても明示が必要となります。
有期労働契約の締結時と更新時更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容有期労働契約の締結と更新のタイミングごとに、更新上限(有期労働契約の通算契約期間または更新回数の上限)の有無の内容の明示が必要となります。

又、更新上限を新設・短縮しようとする場合、その理由をあらかじめ説明することが必要となります。
無期転換ルール※に基づく無期転換申込権が発生する契約の更新時無期転換申込機会「無期転換申込権」が発生するタイミングごとに無期転換を申込むことが出来る旨の明示が必要になります。
無期転換ルール※に基づく無期転換申込権が発生する契約の更新時無期転換後の労働条件「無期転換申込権」が発生するタイミングごとに無期転換後の労働条件の明示が必要になります。

人事労務担当者が対応すること

【1】 自社の労働条件通知書の見直し

現在、使⽤している労働条件通知書(雇用契約書などを含む)の内容を精査し、新たに設けられた明示事項を自社のテンプレートに追加します。

【2】 有期契約労働者の把握

自社で雇用している有期契約労働者をリスト化し、雇用している有期社員の人数、更新回数、勤続年数、担当業務の内容などを整理する必要があります。

【3】 無期転換後の運用方法を見直す

有期契約労働者を無期転換後、どのような社員として位置づけるかなど人材活用を戦略的に行うため、無期転換ルールへの対応の方向性を検討しましょう。必要に応じて就業規則等の整備も必要となります。

【4】 無期転換申込権の理解

無期転換申込権を得た有期雇用労働者から、契約期間満了までに無期転換の申込みを受けた場合、事業主はこの申込みを拒否できません。 申込みがあった時点で契約期間終了日の翌日から、雇用者と労働者の間で無期雇用契約が開始されることになります。また無期転換権の発生前に解雇や雇止めを行うような運用をしてしまうと裁判などで雇止めや解雇が無効となるばかりか、多額の損害賠償等を請求される可能性もございます。

③裁量労働制の導入‧継続に新たな手続きが追加

改正の概要

裁量労働制には「事業場外みなし労働時間制」「専門業務型裁量労働制」「企画業務型裁量労働制」がありますが、2024年4月1日以降、「専門業務型裁量労働制」「企画業務型裁量労働制」の導入・継続に新たな手続きが追加されました。

改正のポイント

対応が必要な事項専門型企画型
1 本人同意を得る・同意の撤回の手続きを制定
2 労使委員会に賃金・評価制度を説明
3 労使委員会は制度の実施状況の把握と運用改善
4 労使委員会は6か月以内ごとに1回開催
5 定期報告の頻度の変更

1 本人同意を得る・同意の撤回の手続きを制定

【専門業務型裁量労働制】
・本人の同意を得ることや、同意をしなかった場合に不利益取り扱いをしないことを労使協定に定める必要があります。
・同意の撤回手続きと、同意とその撤回に関する記録を保存することについて労使協定に定める必要があります。
【企画業務型裁量労働制】
・同意の撤回手続きと、同意の撤回に関する記録を保存することについて労使委員会の決議に定める必要があります。

2 労使委員会に賃金・評価制度を説明

【企画業務型裁量労働制】
・対象労働者に適用される賃金・評価制度の内容について、使用者から労使委員会に対する説明に関する事項を労使委員会の運営規程に定める必要があります。
・対象労働者に適用される賃金・評価制度を変更する場合に、労使委員会に変更内容の説明を行うことを労使委員会の決議に定める必要があります。

3 労使委員会は制度の実施状況の把握と運用改善

【企画業務型裁量労働制】
・制度の趣旨に沿った適正な運用の確保に関する事項を労使委員会の運営規程に定める必要があります。

4 労使委員会は6か月以内ごとに1回開催

【企画業務型裁量労働制】
・労使委員会の開催頻度を6か月以内ごとに1回とすることを労使委員会の運営規程に定める必要があります。

5 定期報告の頻度の変更

【企画業務型裁量労働制】
・定期報告の頻度について、労使委員会の決議の有効期間の始期から起算して初回は6か月以内に1回、 その後1年以内ごとに1回になります。

人事労務担当者が対応すること

専門業務型裁量労働制の場合

【1】労使協定の見直し

今回追加された新たな ルールに対応した労使協定届を労働基準監督署へ届出る必要があります。既に専門業務型裁量労働制を運用しており、労使協定の有効期間が2024年4月1日以降である場合についても継続導入する場合は、2024年3月31日までに労働基準監督署に協定届の届出を行う必要があります。

【2】 労働者の同意

専門業務型裁量労働制の導入にあたり、労働者本人の同意を得なければなりません。 使用者は協定の内容等の制度概要、賃金・評価制度の内容、同意しなかった場合の配置・処遇について明示した上で説明して労働者本人の同意を得ることが必要となります。この同意は書面で行うことが好ましいでしょう。

専門業務型裁量労働制の場合

【1】決議書の見直し

今回追加された新たな ルールに対応した決議書を労働基準監督署へ届出る必要があります。既に企画業務型裁量労働制を運用しており、労使協定の有効期間が2024年4月1日以降である場合についても継続導入する場合は、2024年3月31日までに労働基準監督署に決議書の届出を行う必要があります。

【2】運営規程の見直し

労使委員会の運営規程について、「対象労働者に適用される賃金・評価制度の内容についての使用者から労使委員会に対する説明に関する事項」「・制度の趣旨に沿った適正な運用の確保に関する事項(制度の実施状況の把握の頻度や方法など)」「労使委員会の開催頻度を6か月以内ごとに1回とすること」を追加する必要があります。

【3】定期報告

決議の有効期限の始期から起算して初回は6箇月以内に1回、その後1年以内ごとに1回、対象労働者の労働時間の状況、健康・福祉確保措置の実施状況、同意及びその撤回の実施 状況を所轄労働基準監督署へ報告しなければなりません。

導入の経緯や実務上の注意点などの詳細な情報は、下記にまとめています。あわせてご参考ください。

(関連記事)裁量労働制のルール変更とは?社労士が導入の経緯や注意点などを解説【2024年重要トピック】

④障がい者雇用率の引き上げ、短時間労働者である 障がい者の実雇用率における算定の変更

改正の概要

従業員が一定数以上の規模の事業主(2024年3月31日までは43.5人以上)に対して、法定雇用率以上の割合で障がい者を雇用する義務があります。2024年4月1日以降、法定雇用率が段階的に引き上げられます。

その影響により実質的に障がい者を雇用しなければならない事業主の範囲が広がりました。さらに、障がい者雇用における障がい者の算定方法が変更となります。

改正のポイント

障がい者の法定雇用率

障がい者の法定雇用率が2024年(令和6年度)から2026年(令和8年度)にかけて、段階的に引き上げられます。今回の改正により事業主には、従業員数40人(週20時間以上30時間未満の短時間労働者は0.5人とする。)ごとに1人の障がい者を雇用することについて義務づけられています。

改正年度2023年度2024年4月2026年7月
法定雇用率2.3%2.5%2.7%
対象事業主の範囲43.5人以上40人以上37.5人以上

障がい者の算定方法の変更

週所定労働時間が10時間以上20時間未満の精神障がい者、重度身体障がい者及び重度知的障がい者について、雇用率上、0.5カウントとして算定できるようになります。下記の表は2024年4月以降。

週所定労働時間30時間以上20時間以上30時間未満10時間以上20時間未満
身体障がい者1人0.5人
重度身体障がい者2人1人0.5人
知的障がい者

1人0.5人
重度知的障がい者
2人1人0.5人
精神障がい者1人0.5人※0.5人
※当分の間、1人とカウントする特例措置あり

人事労務担当者が対応すること

【1】必要な雇用人数の把握

現在の従業員数から何人の障がい者を雇用すればよいのか把握する必要があります。計算方法は従業員数に法定雇用率を乗じた人数(小数点以下切捨て)となります。
【例】従業員数115人の場合
115人×2.5%(法定雇用率)=2.875人→2人以上の障がい者を雇用する必要がある。必要な人数を把握した上で、採用計画を行いましょう。

【2】障がい者雇用についての理解

多くの場合、障がい者と一緒に働く人は経営者ではなく従業員となります。経営者だけが、障がい者雇用の必要性や障がい者の特性を理解していればよいというものではありません。また、障がい者と現場で一緒に働く従業員の理解や協力がなければ、企業で継続的・安定的に障がい者雇用を行っていくことはできないでしょう。そのため経営者が障がい者雇用制度を理解した上で、社内に共有していくことが大切でしょう。経営者が理解を深めるにあたり厚生労働省からわかりやすい事業主向けのパンフレットがダウンロード可能です。まずはそちらを読んでみてください。

(参考)「障がい者雇用のご案内」

【3】労働環境整備

障がい者が安心して働けるように職場環境の整備が必要となります。独立行政法人 高齢・障害・休職者雇用支援機構の「障害者雇用事例リファレンスサービス」のホームページ上で既に障がい者雇用に先駆的に取り組んでいる事業所の好事例を紹介しています。業種、障がい種別、従業員規模など細かな検索が可能です。また障がい者の受入れや雇用管理に関する相談や⽀援は、ハローワークや地域障害就業センター、障碍者就業・生活支援センターにて無料で受けることができます。

(参考)「障害者雇用事例リファレンスサービス」

【4】障害者雇用に必要な手続きを行う

・障がい者を雇用した事業主は、毎年6月1日時点の障がい者雇用の状況を「障害者雇用状況報告」に記載し7月15日までにハローワークへ届出る必要があります。

・常時雇用する障碍者が5人以上の事業所では、障害者の実人員が5人以上となってから3 か月以内に、職場内で障害者の職業生活全般の相談に乗る「障害者職業生活相談員」を選任する必要があります(選任する者には一定の要件があります)。また、選任後は、遅滞なくその事業所を管轄するハローワークに「障害者職業生活相談員 選任報告書」を届け出る必要があります。

・障害者の雇用義務のある事業主は、事業所内で障害者雇用の取組体制を整備する「障害者雇用推進者」を選任するよう努める必要があります。「障害者雇用状況報告」様式内に、障害者雇用推進者の役職・氏名を記入する欄があります。

・障がい者を解雇する場合、速やかに障がい者を雇用していた事業所を管轄するハローワークに「解雇届」を届け出る必要があります。

※週所定労働時間20時間未満の常時雇用する障害者を解雇する場合も、届出が必要です。

(関連記事)障害者雇用率の引き上げについて【2024年重要トピック】

⑤所得税と住民税の定額減税

改正の概要

賃金上昇が物価高に追いついていない国民負担の緩和やデフレ脱却のための一時的な措置として所得税・個人住民税の定額減税を実施すると決定されました。2024年3月現在現在、国会審議中ですが、今期国会で本改正が成立し、令和6年4月に改正法が施行され、同年6月以降、定額減税が実施されることと見込まれています。

改正のポイント

所得税定額減税

2024年分の合計所得金額が1,805万円以下(年収2,000万円以下)の所得税の納税者である居住者に対して、以下の金額を2024年6月以後の給与等に対する源泉徴収額から控除することとされています。

  1. 本人 30,000円
  2. 同一生計配偶者、扶養親族 1人つき30,000円

※同一生計配偶者とは、2024年12月31日の時点で本人と生計を一にする配偶者(青色事業専従者等を除きます。)で年間の合計所得金額が48万円以下(年収103万円以下)の方に限られます。
※扶養親族とは、扶養親族は扶養控除等申告書に記載されている控除対象扶養親族だけではなく、16歳未満の扶養親族も該当します。
※対象本人の減税額は①と②の合計額となります。その合計額が2024年の所得税額を超過していたとしても、還付を受けることや翌年に繰越すことは出来ません。

所得税の定額減税事務には大きく分けて二つの業務があります。

(1)月次減税事務

2024年6月1日以降に支払われる給与や賞与に対する源泉徴収税額から減税を行います。

なお、減税額については、最初の月次減税事務を行う時までに提出されている扶養控除申告書又は「源泉徴収に係る申告書」の記載内容に基づき判定します。

例)本人 配偶者 扶養親族(子3歳) の場合 減税額90,000円

6月7月8月9月10月11月
課税対象額460,000円460,000円460,000円460,000円460,000円460,000円
源泉所得税18,170円18,170円18,170円18,170円18,170円18,170円
定額減税-18,170円-18,170円-18,170円-18,170円-17,320円0円
(2)年調減税事務

2024年7月以降に扶養人数の変更があった場合には年末調整の際、年末調整時点の定額減税額に基づき清算を行います。なお、7月以降に子の出生によって扶養親族の人数が増えた場合や人数の異動については、月次減税は行わず年末調整又は確定申告により清算されることとなります。

住民税定額減税

2024年分の合計所得金額が1,805万円以下(年収2,000万円以下)の個人住民税の納税者である居住者に対して、以下の金額を2024年度の個人住民税から控除することとされています。

  1.  本人 10,000円
  2.  同一生計配偶者、扶養親族 1人つき10,000円

※同一生計配偶者とは、2024年12月31日の時点で本人と生計を一にする配偶者(青色事業専従者等を除きます。)で年間の合計所得金額が48万円以下(年収103万円以下)の方に限られます。
※扶養親族とは、扶養親族は扶養控除等申告書に記載されている控除対象扶養親族だけではなく、16歳未満の扶養親族も該当します。

住民税の定額減税については、以下のように実施されます。

(1)給与からの特別徴収(給与天引き)の方

2024年6月分は特別徴収を行わず、減税後の税額を11分割した額を7月以降の給与から徴収します。

(出典引用) 流山市 令和6年度の個人市・県民税(住民税)に適用される定額減税について

(2)普通徴収(納付書。口座振替)の方

第1期分から減税し、減税しきれない場合は第2期以降の税額から減税します。

 (出典引用) 流山市 令和6年度の個人市・県民税(住民税)に適用される定額減税について

人事労務担当者が対応すること

【1】 減税額の把握

全従業員の減税額を把握する必要があります。また、扶養控除申告書を提出していない従業員がいる場合はすみやかに提出を求める必要があるでしょう。

【2】給与計算ソフトの設定

住民税について、通常、6月から翌年の5月までの12か月の住民税をお使いの給与ソフトに入力していると思いますが、今年は7月から控除開始になりますので注意が必要です。

導入の経緯や実務上の注意点などの詳細な情報は、下記にまとめています。あわせてご参考ください。

(関連記事)定額減税とは?社労士が導入の経緯や注意点などを解説【2024年重要トピック】

⑥短時間労働者に対する社会保険の適用拡大

改正の概要

社会保険の適用拡大とは、これまで健康保険‧厚生年金保険に加入していなかった一部のパート‧アルバイト従業員に対して、社会保険加入を必須とする法改正です。2016年10月より段階的に拡大されてきましたが、2024年10月からは「従業員数※が常時51人以上」の企業にまで対象が拡大されることとなります。

※従業員の定義は、現在の厚生年金保険の被保険者数となります。

改正のポイント

対象となる企業

2016年10月~2022年10月~2024年10月~
従業員数501人以上の企業従業員数101人以上の企業従業員数51人以上の企業

社会保険の適用拡大に伴い、加入義務が発生する労働者は以下の要件を全て満たす労働者となります。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上
  2. 所定内賃金が月額8.8万円以上
  3. 2か月を超える雇用見込み
  4. 学生ではない。(休学中や夜間学生は加入対象)

人事労務担当者が対応すること

【1】 自社が適用拡大の対象になるかを確認する

従業員数(=厚生年金保険の被保険者数)が51人~100人で、新たに適用拡大となる企業は、2024年9月上旬までに日本年金機構から通知書類が届きます。

しかし、この時期では届出期限までに社内の手続きを終えることができなくなってしまいます。そのため、あらかじめ常時雇用する従業員数を数え、自社が適用拡大の対象となるのかを確認しておくことをお勧めします。

原則としては従業員数の基準を常時上回る場合には適用対象になります。自主的に判断し、速やかに届出てください。届出をしない場合でも、直近の1年間で6か月以上の期間において、被保険者の総数が51人以上になることが見込まれる場合は、日本年金機構において適用と判断されます。

【2】 加入対象となるパート‧アルバイト従業員の把握

社会保険の加入対象となるパート‧アルバイト従業員を把握します。まずは社会保険に加入していない従業員をリスト化し、各従業員の労働条件を確認するとよいでしょう。

【3】 社会保険料の企業負担分を把握

自社が適用拡大の対象になると、新たに加入する従業員にとっては社会保険料が生じ、また企業にとっては社会保険料の金額が高くなります。社会保険料の増加による企業の資金繰りへの影響を把握するため、企業が負担する社会保険料をあらかじめ概算しておきましょう。

【4】変更点を従業員に説明する

社会保険の加入対象となるパート‧アルバイト従業員には、法改正の趣旨とメリット‧デメリットの説明を行います。必要に応じて説明会や個人面接を実施し、対象者の労働時間の希望を聞くようにしましょう。対象となるパート‧アルバイト従業員のなかでは「社会保険に加入せずにすむよう、労働時間を減らしたい人」と「社会保険に加入して、なおかつ現状より手取りを増やすために労働時間を増やしたい人」で二極化する傾向にあります。希望が通らないことによって退職者が多く発生すれば、企業にとって大きなリスクとなるでしょう。納得感をもって働き続けてもらうためにも、話し合いの場を設けることは重要です。

【5】 対象者の資格取得に関する手続きの準備をする

適用拡大の対象となる企業は、以下の書類の提出準備を行いましょう。いずれも事実発生から5日以内(2024年10月から対象となる場合は2024年10月5日まで)に、事務センターまたは事業所を管轄する年金事務所に提出します。

・特定適用事業所該当届※
・被保険者資格取得届
・被扶養者(異動)届(必要な場合)

※⽇本年⾦機構から特定適⽤事業所に該当することを知らせる通知(特定事業所該当事前のお知らせ)が届いた場合、特定適⽤事業所該当届の提出は不要となります。

⑦フリーランス新法施行

改正の概要

フリーランスが受託した業務に安定的に従事する環境を整備するため、「取引の適正化」と「就業環境の整備」を図ることを目的とし「フリーランス・事業者間取引適正化等法」、いわゆるフリーランス新法が2023年5月12日に公布されました。2024年秋ごろまでには施行される予定となっています。

改正のポイント

この法律では、発注事業者とフリーランスの間の「業務委託」に係る事業者間取引において、フリーランスに委託する業務の内容や報酬額等を明示することを発注事業者に義務付けています。

用語の定義

フリーランス業務委託の相手方で、従業員※を使用しないもの
発注事業者フリーランスに業務委託する事業者で、従業員を使用するもの
業務委託事業者がその事業のために他の事業者に物品の製造、情報成果物の作成又は役務の提供を委託することをいう。

※従業員とは、「週20時間以上かつ31日以上の雇用が見込まれるもの」を「従業員」と想定しているようです。従って週3日1日5時間のアシスタントを雇用する漫画家はフリーランスとなります。

発注事業者が満たす要件によってフリーランスに対しての義務の内容が異なります。

フリーランスに業務委託する事業者、かつ従業員を使用していない。(※1)・書面による取引条件の明示
・フリーランスに業務委託する事業者、かつ従業員を使用している。・書面による取引条件の明示
・報酬支払期日の設定
・期日内の支払
・募集情報の的確表示
・ハラスメント対策に係る体制整備
・継続的(※2)にフリーランスへ業務委託する事業者、かつ従業員を使用している。・書面による取引条件の明示
・報酬支払期日の設定・期日内の支払
・禁止事項 ・募集情報の的確表示
・育児介護等と業務の両立に対する配慮
・ハラスメント対策に係る体制整備 ・中途解除等の事前予告・理由開示

※1フリーランスに業務委託するフリーランスも含まれます。
※2継続的といえる具体的な期間については、まだ正確には定まっておりませんが目安としては1か月で検討しているようです。

義務の具体的な内容は以下の通りになります。

義務項目具体的な内容
書面等による取引条件の明示業務委託した場合の書面、直ちに、以下の取引条件を書面又は電磁的方法(メールだけでなくSNSも可)により明示することを義務付けています。 ①委託内容 ②報酬額(算定方法でも可) ③支払期日 ④発注者とフリーランスの称号、名称等 ⑤業務委託した日 ⑥納期 ⑦納品場所 ⑧納品物の検査完了日 ⑨報酬の支払方法に関して必要な事項 ④~⑨については未確定
報酬支払期日の設定・期日内の支払フリーランスから納品等を受け取った日から数えて60日以内の報酬支払期日を設定し、期日内に報酬を支払うことを義務付けています。
禁止事項フリーランスに責任がないにも関わらず以下の行為を行うことを禁止しています。 納品物の受領を拒むこと報酬を減額すること納品物の返品を行うこと著しく低い報酬額を不当に定めること正当な理由なく自己の指定する物の購入、サービスの利用を強要すること
募集情報の的確表示広告などにフリーランスの募集に関する情報を掲載する際に、虚偽や誤解を与える表示をしてはならず、正確で最新の情報を保たなければなりません。
育児介護等と業務の両立に対する配慮フリーランスが育児や介護などと業務を両立できるようにフリーランスからの申出に応じて必要な配慮をしなければなりません。
ハラスメント対策に係る体制整備フリーランスに対するハラスメント行為に関する相談対応のため体制整備などの措置を講じることを義務付けています。
中途解除等の事前予告・理由開示契約の途中での解除や更新しない場合は、原則として30日前までに予告することを義務付けています。

人事労務担当者が対応すること

【1】 フリーランスとの取引があるかの確認

業務を委託している委託先の洗い出しを行いましょう。その中でフリーランスの定義に該当する委託先をリスト化し、現在の契約内容を確認しましょう。

【2】明示方法の検討

明示事項についてフリーランスに対してどのような方法で明示を行うか検討が必要でしょう。書面で行う場合については契約書ではなくてもよいことになっています。契約書で行う場合については、雛形の見直しが必要でしょう。

【3】フリーランスを受入れる体制整備

フリーランスの方に対するハラスメント行為を相談する体制を整備や妊娠・出産、育児または介護に対する配慮義務があります。場合によってはフリーランス規程などを作成して運用方法を定める必要があるでしょう。

⑧マイナンバーカードと健康保険証の一体化

改正の概要

新型コロナウイルス感染症対策の経験により、社会における抜本的なデジタル化の必要性が顕在化しました。デジタル社会の基盤であるマイナンバーカードについて国民の利便性向上等の観点から、マイナンバーカードによるオンライン資格確認を原則とする改正法案が2024年3⽉7⽇に国会に提出され、2024年秋ごろをめどにマイナンバーカードと健康保険証が⼀体化(以下、マイナ保険証)される予定です。なお、発行済みの健康保険証は、改正法施行後1年間(先に有効期間が到来する場合は有効期間まで)有効とみなす経過措置を設けることとなっております。

改正のポイント

マイナ保険保険証の導入目的

・顔認証による本人確認でなりすましを防止
・正確なデータに基づく診察や薬の処方が受けられる
・ 特定健診や薬の情報をマイナポータルで閲覧できる・医療機関窓口での限度額以上の一時支払いの手続きが不要
・救急医療における 患者の健康・医療データ の活用
・診察券・公費負担医療の受給者証とマイナンバー カードの一体化    

利用者のメリット

マイナンバーカードと保険証が⼀体化されると、転職や離職による健康保険証の切り替えが不要になります。また、特定健診の結果や処方された薬の情報をマイナポータル上で閲覧できるようになります。そのほか、マイナポータルからe-Taxに連携し、確定申告が簡単にできることなどがメリットとして挙げられています。将来的にはスマートフォン1台で医療機での受診が受けられるようになる想定です。

人事労務担当者が対応すること

現状、企業が対応すべき内容の発表はございませんが以下の内容について、対応が必要になることが想定されます。

【1】 保険証の回収

マイナ保険証の導入により、現在利用している保険証の回収および保険者への返却が必要となる可能性があります。

【2】 従業員への説明

保険証の廃止に伴い、混乱してしまう従業員が出てくることも想定されます。そのため、企業が制度を理解した上で、各従業員に対して制度の説明や、マイナポータルの操作⽅法や資格確認⽅法の説明などの取り組みが必要になる可能性があります。

【3】 マイナンバーカードの取得呼びかけ

マイナンバーカードを未取得の従業員に対して作成するように呼び掛けが費用となる可能性があります。

【4】 手続の迅速化

 迅速かつ正確なデータ登録のため、転職等による新規資格取得時に、マイナンバーを記載した資格取得届を、5日以内に保険者に提出するようあらためて徹底することが必要となる可能性があります。特に、マイナンバー取扱業務を外部委託している場合であっても5日以内の提出がなされるよう、早期に委託内容の見直しが必要となるでしょう。

法改正以外の通常業務について

給与支払報告書、賞与計算、住民税の更新、算定基礎届や労働保険料の更新時の注意点などの通常業務は、下記の記事で紹介しています。あわせてご参考ください。

(関連記事)人事労務担当者が1月~3月に取り組むべき事項
(関連記事)人事労務担当者が4月~6月に取り組むべき事項
(関連記事)人事労務担当者が7月~9月に取り組むべき事項
(関連記事)人事労務担当者が10月~12月に取り組むべき事項

    まとめ

    2024年以降に人事労務分野で対応しなければならない重要トピック8個についてご紹介しました。4月以降も、6月の定額減税、12月のマイナンバーカードと健康保険証の一体化などが続きます。日常業務をこなしつつ、新ルールへの対応は大変なことだと思います。キテラボからも皆さまのお役に立つような情報を発信していきますので、ぜひご活用ください。


    この記事を書いた人

    髙木 涼太
    行政書士

    株式会社KiteRa エキスパートグループの行政書士。
    1991年、神奈川県横浜市生まれ。大学を卒業後、教材の訪問販売を行っている企業へ入社し、千葉県、茨城県を中心に営業活動に従事。2015年10月から国内大手の社会保険労務士法人へ入社。4年間事務センターにて手続業務を行った後、顧問先に直接訪問する部門へ異動。異動後、2年連続で就業規則、新規契約の年間売上1位(100名弱中)を獲得。2022年7月に退職。2022年8月TKG行政書士事務所を開業。並行して2022年9月から従業員10名弱の社労士法人に入社。2024年1月に社労士法人を退職し同年2月KiteRaへ入社。

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