TOP労務コラム医師の時間外労働上限規制とは?導入の経緯や注意点などを解説 【2024年重要トピック】

医師の時間外労働上限規制とは?導入の経緯や注意点などを解説 【2024年重要トピック】

町田 幸枝
2024.04.10

株式会社KiteRa エキスパートグループの町田幸枝(株式会社KiteRa)です。

医師に対しても、2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されました。36協定の届出などの準備は万全かと思いますが、不安な気持ちを抱えている人事労務担当者もいらっしゃると思います。本記事では、特例水準や宿日直許可の解説から、実務上の注意点まで、幅広くご紹介します。

改正の概要

2019年4月施行の働き方改革関連法に基づき、2024年4月1日から、診療に従事する医師(※雇用されている勤務医の場合)についても時間外・休日労働時間の上限規制が適用されました。

一般企業ではこの時間外労働の上限規制適用が既に開始されており、医療業においても医師以外の職種には既に適用されていましたが、医師については5年の猶予期間が設けられていました。この猶予期間は2024年3月をもって終了となり、2024年4月からは医師の働き方改革が本格的に始動しました。

医師の働き方改革においては、時間外労働の上限規制の他、医師労働時間短縮計画の作成や新たに創設される医療機関の特例水準の指定、健康確保措置等が講じられることとなります。


改正の背景

日本の医療は世界でもトップレベルと言われており、1950年~2020年にかけて我が国の平均寿命は20歳以上も伸びています(※下記「令和5年高齢社会白書」の抜粋データ参照)。これは日本の医療体制の成果であると共に、これまでの医師の働き方によって成し遂げられてきました。

(出典引用) 内閣府|令和5年高齢社会白書「第1章第1節1高齢化の現状と将来像」

また、厚生労働省の「医師の勤務実態調査(令和元年)」データによると、病院常勤勤務医の時間外・休日労働時間は、約4割が960時間超、約1割が1,860時間を超えており、とりわけ救急・産婦人科・外科・若手医師などの長時間労働が目立つ結果となっています。日本の医療は「臨床・教育・研究」といった三位一体の医療制度によって構築されてきましたが、これは医師の長時間労働によって作り上げられてきたものとも言えるのです。






(出典引用) 厚生労働省|第9回 医師の働き方改革の推進に関する検討会資料「医師の勤務実態について」P5、P10

したがって、今回の医師の働き方改革においては、医師の健康確保を目的としつつ、医療の質を担保するという観点も念頭に置きながら進めていかなければなりません。2019年施行の働き方改革において医師に猶予期間が設けられた背景には、我が国の医療がこのような医師の長時間労働によって支えられてきたという事実の他、その業務の特殊性や医療現場への影響を考慮しなければならないという側面が存在します。
また、過重労働の影響により、深刻な医師不足に陥っていることも要因の一つです。今後の高齢化社会に向けて医療介護のニーズがますます増加していく中で、医師の健康を確保しつつ医療の質・安全を担保していくことが重要課題となっています。

このような状況を踏まえ、政府は医療法改正による制度面での整備を次の3つの視点で進めてきました。

<医療法改正による制度面での整備>
 ・医師の働き方改革
 ・各医療関係職種の専門性の活用
 ・地域の実状に応じた医療提供体制の確保

2024年4月1日から適用となる時間外労働の上限規制は「医師の働き方改革」の要でありながらも、「医師の2024年問題」とも囁かれてきたように医療業を営む事業者にとっては厳しい条件であると言わざるを得ません。しかしながら、2024年4月以降、定められた上限を超える時間外・休日労働は許されないということも事実です。
このような現状を踏まえた上で、本記事では、医師の働き方改革の概要と共に、実務におけるポイントについて解説していきます。

改正の詳細

【1】制度の概要

(1)時間外・休日労働時間の上限時間と3つの特例水準

新制度においては、勤務先医療機関の特性に応じて都道府県知事による特例水準対象医療機関の指定が行われ、これによって時間外・休日労働の上限時間も異なります。下の表は、医療機関に適用される特例水準についてまとめたものです。

(出典引用) 厚生労働省いきサポ|(資料)医師の働き方改革~患者さんと医師の未来のために~

すべての勤務医に対して原則的に適用されるのはA水準です。A水準以外の指定を受ける場合は、医療機関ごとに評価センターの評価を受け、その後、都道府県知事の指定を受けなければなりません。

(2)健康確保措置

今回新たなルールとして、医師の健康を確保するための措置が設けられました。下の表は各特例水準ごとの措置についてまとめたものです。適用を受ける水準によって、その措置が義務なのか努力義務なのかが異なるため注意が必要です。
各措置の詳細については「【2】各医療機関における手続き」で解説します。

◎:義務  〇努力義務  △:状況によって義務化


健康確保措置
概要連携BCー1C-2
連続勤務時間制限原則28時間まで
勤務間インターバル・通常日勤および宿日直許可のある宿日直:始業から24時間以内に9時間の連続休息時間

・宿日直許可のない宿日直:始業から48時間以内に18時間の連続休息時間
代償休息※アとイが実施できなかった場合
面接指導・時間外・休日労働が月間100時間前

・原則勤務時間中に実施
※A水準についても100時間を超える場合は義務化

(3)宿日直許可について

1)宿直とは
医療法第16条により、病院の管理者は、病院に医師を宿直させなければならないこととされています。
宿直中は手待ち時間も含めて原則労働時間になりますが、医療機関が労働基準監督署による宿日直許可を受けている場合は、その宿日直に携わる時間は規制対象となる労働時間に含まれません。
ただし、宿日直許可を受けている場合であっても、宿日直中に通常の勤務時間と同様の業務に従事した時間については、許可の効果が及びません。この場合は、労働時間の規制対象となります。

2)宿日直許可
宿日直中の勤務実態が「労働密度が低く十分な休息をとることが可能」と認められる場合、労働基準監督署から「宿日直許可」を受けることができます。また、医療機関全体ではなく、一部の診療科や時間帯に限った形でも申請可能です。
宿日直許可の対象となるのは、次の要件に該当する業務となります。

<宿日直許可基準の対象業務>

①問診等による診察(軽度の処置を含む)等、通常業務とは異なる軽度または短時間の業務であること
②救急患者の診療など、通常業務と同等の業務が発生することはあっても、その頻度がまれであること
③宿直の場合は、相当の睡眠設備があり、夜間に十分な睡眠を取り得ること
④常態として、ほとんど労働する必要のない勤務であり、通常業務の延長・継続ではないこと

なお、宿日直許可の回数は、原則、同一医師の宿直が週1回、日直が月1回以内です。許可回数を超えて宿日直に従事させた場合、超過分については通常の労働としての取扱いが必要となります。

【2】医療機関における具体的な手続きと流れ

(1)連携B・B・C水準の指定を受ける場合の手続き全体像

連携B・B・C水準の指定を受ける場合の手続きの流れは次のようになっています(※こちらは一例となりますので、実際の手続きにあたっては各医療機関ごとに必要事項をご確認ください)。

(出典引用) KiteRa資料集|医師の2024年問題 2024年4月以降の新様式 36協定の変更点

なお、A水準についてはすべての勤務医に対して原則的に適用されるため、A水準を適用する場合は上記の指定申請手続きは不要です。それではここからは、このフローチャートの流れに沿った具体的な手順について解説していきます。

(2)具体的な手順と実務上の注意点

手順1:医師の労働時間の実態把握

指定申請手続きを開始するにあたっては、各医療機関においてどの特例水準の適用を受けるかを決めます。そのためにはまず、当該医療機関における医師の労働時間の把握をしておくことが必要です。これは後述の医師労働時間短縮計画の作成にも関わってくるため、タイムカード等による客観的な実労働時間把握のための仕組みづくりと共に、重点的に行っていかなければならない取組みの一つとなります。また、労働時間の実態把握においては、次のことにも留意してください。

1)労働時間に該当する業務範囲の明確化

労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間を指します。そのため、あらかじめ労働時間と見なす業務範囲を明確にしておく必要があります。
中でも自己研鑽の取扱いについては注意が必要です。自己研鑽が労働時間に該当するか否かは、「使用者の指揮命令下に置かれているかどうか」により判断されます。また、業務範囲を明確化した際は、職員に周知しておくことも大切です。

(参考)厚生労働省|医師の働き方改革と時間外労働の上限規制 P17医師等の宿日直許可基準

2)副業・兼業先での労働時間の把握

医師が他の医療機関で副業・兼業を行った場合、その労働時間は通算されます。各医療機関での労働時間を合計し、時間外・休日労働時間を以下の表に記載されている上限の範囲内としなければなりません。

(出典引用) 厚生労働省|医師の働き方改革2024年4月までの手続きガイド P41副業・兼業時の労働時間の上限(参考)

また、副業・兼業先での労働時間の把握については、原則当該医師の「自己申告」に基づきます。そのため、労働時間の把握と共に、副業・兼業の予定や従事した労働時間を把握する仕組みづくりを並行して行っておく必要があります。

手順2:宿日直許可の取得(※該当する場合のみ)

「【1】制度の概要(3)宿日直許可」で述べたとおり、宿日直許可を受けた場合、これに該当する業務時間は規制対象となる労働時間に含まれません。宿日直許可を受ける場合は、管轄の労働基準監督署への申請が必要です。申請後、労働基準監督署による書面調査・実地調査を経て許可の判断が行われます。

手順3:どの特例水準を受けるかの決定

次に行うのは、どの特例水準を受けるかの決定です。連携B・B・C水準の適用を目指す場合は、事前に評価センターの評価を受ける必要があり、そのための準備を行わなければなりません。
なお、既述したようにすべての勤務医に原則として適用されるのはA水準であるため、A水準の適用を受ける場合は特段の準備は不要です。

評価を受ける際に注意しなければならないのは、指定を受けた特例水準(A水準以外)が、当該医療機関に所属する全医師に自動的に適用されるわけではない(*1)という点です。
1,860時間の上限が適用されるのは、指定理由に対応する業務に従事する医師のみとなります。

例えば、大学病院や地域の基幹病院には多くの診療科がありますが、医師の勤務状況が所属する診療科によって異なる場合や、同じ診療科内であっても、B水準の業務に従事する医師もいればCー1・Cー2水準に該当する医師が所属しているといった場合がこれに該当します。この特例水準は「指定される事由となった業務やプログラム等に従事する医師にのみ適用される」ものであることから、所属する医師にそれぞれ異なる水準を適用する場合は、それぞれの水準について指定を受ける必要があります。

さらに、連携B水準については、自院の36協定に定める時間(年960時間)と実際に働くことができる時間(1,860時間)が異なります(*2)ので、各水準における特性や要件をよく確認してから準備を進めることが大切です。

*1 厚生労働省|医師の働き方改革2024年4月までの手続きガイド P6「時間外労働の上限規制」参照
*2 厚生労働省|医師の働き方改革と時間外労働の上限規制 P4「複数医療機関に勤務する医師に適用される時間外・休日労働の上限の考え方」参照

手順4:医師労働時間短縮計画の作成

1)医師労働時間短縮計画とは

連携B・B・C水準の指定取得を目指す場合、次に行うのは「医師労働時間短縮計画(以下「時短計画」)」の作成です。時短計画は、医師の労働時間を短縮するために医療機関内で取組む事項についてまとめたものであり、作成にあたっては各職種(特に医師)が参加して検討を行うといったことが想定されています。同時に実際の労働時間短縮の取組みを進めていくため活用すべきものであり、PDCAサイクルが実効的に回る仕組みを医療機関内で構築していくこともあわせて求められます。
なお、この時短計画は、都道府県への指定申請の際に提出が必須となります。また、ガイドラインに沿った時短計画の作成は、診療報酬の地域医療体制確保加算の算定要件ともなっています。
時短計画の作成方法・ひな形、留意事項等の詳細については、厚生労働省のガイドラインをご確認ください。

(参考)厚生労働省|医師労働時間短縮計画作成ガイドライン 第1版 
※2024年4月以前に、院内に時間外・休日労働が年960時間を超える医師がいる医療機関は、連携B・B・C水準の指定取得を予定していない(2023年度末までに全員を年960時間以内に収め、A水準を目指す)場合でも、時短計画を作成し、取組みを進める努力義務があります。

2)C-1水準における「研修プログラムにおける労働時間の明示」について

2023年度より、全ての臨床研修病院・専門研修修練施設は、研修を希望している医学生または医師に対して、雇用契約締結の際、医療機関の時間外・休日労働の想定時間数等を明示しなければならないとされています。この時間外・休日労働の想定時間数が年960時間を超える場合は、C-1水準の指定を受けることになります。C-1水準の指定を受けるためには、都道府県への指定申請時にプログラム全体及び各医療機関の時間外労働時間の上限を明示する必要があります。

手順5:医療機関勤務環境評価センターの評価申請

1)評価の流れ

連携B・B・C水準を目指す医療機関は、医療機関勤務環境評価センター(以下「評価センター」)の評価を受け、その評価結果をもって都道府県への指定申請を行います。評価の具体的な流れは次のとおりです。

(出典引用) 厚生労働省|医師の働き方改革2024年4月までの手続きガイド P13医療機関勤務環境評価センター(評価センター)評価の流れ

評価センターでの評価は、次の3つの視点で行われます。

①医療機関内の労務管理体制
②医師の労働時間短縮に向けた取組み
③取組みの実施効果

(参照)厚生労働省|医療機関の医師の労働時間短縮の取組の評価に関するガイドライン (評価項目と評価基準) 第1版

2)C-2水準関連審査について

C-2水準については、評価センターの評価の他、別途厚生労働省の確認(C-2水準関連審査)を受け、C-2水準対象医療機関としての指定を受ける必要があります。また、対象医療機関として指定を受けた場合であっても、これが適用される医師には次の要件があります。

C-2水準を適用できる医師の要件

1 高度な技能の修得のための研修を受けることが適当である医師であることを確認するための審査(C-2水準関連審査)を受けた者であること

2上記審査のため、当該医師は「技能研修計画」を作成すること

※C-2水準審査についての詳細は、「医師の働き方改革C2審査・申請ナビ」をご確認ください。

(3)その他実務上の注意点

健康確保措置について

長時間勤務に従事する医師の健康を守るための措置として、2024年4月からは次のルールが適用されます。

1)勤務間インターバル制度

十分な休息時間(睡眠時間)を確保し、疲労蓄積による医療ミスの発生などを防ぐことを目的として、医師の勤務間インターバル制度が新たに設けられます。勤務シフトを作成する際は、次の2つの方法により勤務間インターバルを確保しなければなりません。なお、 休息時間を細切れにとることは認められませんのでご注意ください。また、各水準における制度の適用義務については、「【1】制度の概要(2)健康確保措置」をご確認ください。

 (出典引用) KiteRa資料集|医師の2024年問題 2024年4月以降の新様式 36協定の変更点 

2)代償休息

9時間または18時間の連続した勤務間インターバル中に、緊急対応による業務に従事した場合は、その労働時間に相当する時間の代償休息を事後的に付与します。下記に、代償休息に関する注意点をまとめました。

代償休息の注意点
代償休息は、翌月末までに付与すること
勤務間インターバル以外の時間帯に付与すること
宿日直許可のある宿日直に従事する場合であっても、その間に通常の勤務と同様の労働が発生した場合は、代償休息付与の配慮をする必要がある。

※C-1水準が適用される臨床研修医の勤務間インターバルと代償休息

C-1水準を臨床研修医に適用する場合は、次の勤務間インターバルのルールに沿ってシフトを組みます。ただし、原則的には、代償休息が発生しないように勤務間インターバルの確保を徹底しなければなりません。

① 始業から24時間以内に9時間の連続した休息時間を確保(通常の日勤および宿日直許可のある宿日直に従事させる場合)

② 始業から48時間以内に24時間の連続した休息時間を確保(臨床研修における必要性から、指導医の勤務に合わせた24時間の連続勤務時間とする必要がある場合)

3)長時間労働医師への面接指導

時間外・休日労働が月100時間以上となることが見込まれる医師には、面接指導を実施しなければなりません。この面接指導は、月の時間外・休日労働時間が100時間以上となる前に実施する必要があります(ただし、A水準適用医師については、疲労の蓄積が認められない場合に限り、100時間以上となった後遅滞なく実施することも可能です)。

また、面接指導を行えるのは「面接指導実施医師」のみとなります。面接指導実施医師の要件は次のとおりです。

①面接指導対象医師が勤務する病院または診療所の管理者でないこと

②「面接指導実施医師養成講習会」を受講した医師であること(※産業医資格があっても受講が必要となります。)

※副業・兼業を行っている医師の面接指導について

副業・兼業を行っている医師の場合、その副業・兼業先の医療機関にも面接指導実施の義務が生じます。当該医師に面接指導の必要性が発生した際、どの医療機関で面接指導を実施するかについては、あらかじめ医療機関同士で話し合いを設けておくことが必要です。その上で、実際には医師本人の選択に基づき、個別に相談の上決定することになります。

その他、面接指導については次の項目も含めて確認し、適切に実施できる体制を整備しておくことが重要です。

・面接指導に関する医療機関管理者の義務
・各水準から見た面接指導実施時期の考え方
・面接指導における確認事項と実施後の業務

(参照)厚生労働省|医師の働き方改革2024年4月までの手続きガイド P21~28「長時間労働医師への面接指導について」

【3】 36協定について

2024年4月より、36協定届が新様式へと変わります。

医療機関においては、時間外労働の限度時間によって協定届の様式が異なります。

様式時間外労働の限度時間
様式第9号の4時間外労働が月45時間、年360時間を超えない場合
様式第9号の5臨時的な特別の事情により、月45時間、年360時間を超えて、時間外・休日労働をさせる場合

臨時的に限度時間(月45時間、年360時間)を超えて労働させる場合には、様式第9号の5の協定届を所轄労働基準監督署に届け出ることになります。様式第9号の5は、一般条項(1枚目)と特別条項(2・3枚目)の計3枚で構成され、各医療機関が受ける特例水準によって記載内容も変わります。

ここからは、様式第9号の5について、各水準ごとの記入例を見ていきましょう。

(1)各水準共通(一般条項)

※一般条項(1枚目)については、各水準共通の内容となります。

(1枚目記載例:各水準共通)

(2)各水準別(特別条項)

1)A水準(特別条項)
(2枚目記載例:A水準)

(3枚目記載例:A水準)

3)連携B水準(特別条項) 
(2枚目記載例:連携B水準)

(3枚目記載例:連携B水準 ※3枚目についてはB・C水準も同じ)

4)B水準(特別条項)※3枚目については連携B水準と同じ
(2枚目記載例:B水準)

5)C水準(特別条項) ※3枚目については連携B水準と同じ
(2枚目記載例:C水準)

36協定の新様式ダウンロードはこちらから

実務上の注意点

医師(※雇用されている勤務医の場合)も労働者のひとりであるため、当然ながら労働基準法が適用されます。よって、2024年4月からは限度時間を超えて時間外労働をさせることはできません。この上限規制に違反した場合は、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金(労働基準法第119条第1項)が科せられる恐れがあります。

また、今回新設された特例水準指定のための手続きは医療機関ごとに異なるものです。
特に、当該医療機関に連携B・B・C水準の業務に携わる医師がいる場合、指定を受けなければ2024年4月以降その業務に従事させることはできません。
特例水準の申請をしない場合は自動的にA水準が適用されてしまいますので、まずは自院においてどの水準の指定を受けなければならないかを確認し、その後、各指定要件をクリアしていくことが重要です。

まとめ

2024年4月直前まで、新ルールへの準備で大忙しだったと思います。人事担当者としては一息つきたいところですが、今後も社内への周知や、勤怠管理のチェックなどが大切になります。

さらに、2024年は6月に定額減税、10月に社会保険の適用拡大などを控えている事業所もあるでしょう。日常業務をこなしつつ、新ルールへの対応は大変なことだと思いますが、対応漏れがないよう気をつける必要があります。キテラボからも皆さまのお役に立つような情報を発信していきますので、ぜひご活用ください。

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この記事を書いた人

町田 幸枝
株式会社KiteRa エキスパートグループ所属

大学卒業後、情報処理業界にて総務・経理業務に携わる。 育児期間を経て、療養型病院・精神病院・介護老人保健施設などの事務長として5年間施設運営管理や労務管理に従事。その後も外国人に多く接する仕事やマネジメント業務を通して、次第に「働く人のためになる仕事をしたい」という思いが強くなる。そんな中、「安心して働ける世界をつくる」というMissionに深く共感し、2022年KiteRaに入社。 社労士を始めとした有資格者が在籍するKiteRaエキスパートグループに所属し、日々ユーザーのための規程雛形やコンテンツの作成をしている。

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