TOP労務コラムマイナ保険証への移行について。人事労務担当者が準備すべきこと【2024年重要トピック】

マイナ保険証への移行について。人事労務担当者が準備すべきこと【2024年重要トピック】

町田 幸枝
2024.06.13

株式会社KiteRa エキスパートグループの町田幸枝(株式会社KiteRa)です。

マイナ保険証への切り替えの準備は進んでいるでしょうか?

そもそもマイナ保険証の利用率は6.56%(2024年4月の厚生労働省発表)とまだまだ低く、従業員に対して基本的な制度の説明が必要になるでしょう。現行の健康保険証の発行は2024年12月2日に廃止されますので、時間的な余裕もそれほどありません。

本記事では、このマイナ保険証への移行に伴い、企業と従業員が行うべき対応や注意点について、本制度の導入目的やメリットと共に解説していきます。

改正の概要

2023年6月の「マイナンバー法の一部改正」におけるマイナンバーカードと健康保険証の一体化(以下「マイナ保険証」)について、その施行日を2024年12月2日とする政令が公布されました(公布日:2023年12月22日)。これにより、現行の健康保険証の発行は2024年12月2日より終了となり、以降はマイナ保険証を利用する仕組みへと移行されます。

本制度への移行によって、従業員が病院を受診した際、加入する医療保険の資格情報をオンラインで即時に確認することが可能となります。加えて従業員自身もマイナポータルから自分の資格情報を常時確認することができ、これまでのような転職や離職による健康保険証の切り替えも不要となります。
また、医療機関においては、医事システムへの入力等が不要となり、保険証確認における事務作業等の負担が大きく軽減されることが期待されます。

なお、現行の健康保険証(施行日時点で有効なもの)については経過措置期間が設けられており、施行後も引き続き最大1年間使用することが可能です(※ただし、経過措置期間中に有効期限が到来した場合や、転職・離職等により保険者の異動が生じた場合はその時点で失効)。

制度導入の背景と仕組み

1.制度の導入目的とその背景

本制度の大きな目的の一つは、医療のデジタル化推進です。そして、この背景にはマイナンバーカードの普及率が未だ低迷しているという事実が存在しており、政府はマイナ保険証への移行によって、マイナンバーカードの取得促進を促すことも視野に入れています。

上記の他、本制度の導入により期待される効果は、主に次のようなことがあげられます。

・顔認証による本人確認が可能となり、なりすましを防止
・特定健診や処方薬の情報をマイナポータルで閲覧が可能
・上記のような医療情報提供に同意することにより、自身の薬の処方履歴や健診結果等から正確なデータに基づく診察や薬の処方が受けられるようになる。
・高額医療や限度額認定の申請手続きが不要となり、窓口での限度額以上の支払いがなくなる。
・救急医療における患者の健康・医療データの活用
・診察券や公費負担医療の受給者証とマイナンバーカードの一体化

2.制度の仕組みと今後の構想

政府は、マイナンバーカードを「デジタル社会における公的基盤」として掲げ、医療分野においての活用促進を計っています。
その中でマイナ保険証は、患者本人の薬剤や診療データに基づく医療提供といった患者と医療現場双方におけるメリットの他、電子処方箋や電子カルテの普及・活用といった医療DXを進めるための基盤として位置づけられています。そのため、今後も引き続き利用促進の取組みが行われていく見込みです。

下の図は、マイナ保険証制度の仕組みを視覚化し、今後我が国が目指す医療DX化の構想についてまとめたものです。将来的にはスマートフォン1台で受診が受けられるようになることが想定されています。

(引用)厚生労働省|マイナ保険証の利用促進等について

制度のメリットと注意点

.制度のメリット

政府は、マイナ保険証のメリットとして、大きく次の4点を掲げています。

(引用)マイナポータル|マイナンバーカードが健康保険証等として利用できます

上記の4点を踏まえ、マイナ保険証におけるメリットとその概要を次の表にまとめてみました。

メリット詳細
就職・転職や退職等異動に伴う切り替え手続き不要マイナンバーカードと健康保険証の一体化により、従業員の異動に伴う健康保険証の切り替え手続きが不要となる。
※ただし、保険者への新規資格取得や資格喪失時の申請手続きは引き続き必要
診療・健康情報の提供特定健診の結果や処方された薬の情報を、マイナポータル上で閲覧できるようになる。
情報提供に伴うより良い医療の提供医療情報の提供に同意することにより、患者の処方履歴や健診結果等から正確なデータに基づく診察や薬の処方が受けられるようになる。
高額医療費・限度額適用認定の申請手続き不要高額医療費や限度額適用認定証の申請手続きが不要となり、窓口での限度額以上の負担がなくなる。
確定申告の手続き負担の軽減マイナポータルからe-Taxに連携し、確定申告が簡単にできる。

2.本制度における注意点

このようにマイナ保険証には多くのメリットもありますが、次のような課題もあります。
いずれも企業での対応に影響する可能性があるため、今後も動向をしっかり確認していくことが必要です。

<マイナ保険証における今後の課題>

マイナンバーカード未取得者や利用未登録者への対応
別人登録の事例等、これまで実際に起こったマイナンバーカードにおけるトラブルの影響により、個人情報漏洩リスクの観点から、取得や登録が思うように進まないことも考えられる。

オンライン資格確認システム未導入の医療機関がある
すべての医療機関等にオンライン資格確認システムの導入が原則義務づけられたものの、厚生労働省のデータ(※)によると2024年3月31日時点で同システムを申し込んだ医療機関等は91.2%となっており、実際に参加している機関は90.5%となっている。
(※)データ元:厚生労働省|オンライン資格確認の都道府県別導入状況について

将来的にスマートフォン1台で受診可能とする構想ではあるものの、スマートフォンがない人への問題はどこまで対応できているかが不明瞭。

企業における対応

それではここからは、企業における具体的な対応について述べていきます。マイナ保険証への移行に伴い、各企業の労務担当者と従業員それぞれにどのような対応が必要になるのか確認していきましょう。

1.労務担当者が行う対応

(1)制度の理解及び必要な手続き等の洗い出しと対応方針の決定

労務担当者は、まず、マイナ保険証への切り替えに伴う手続き等、本制度について十分に理解しておくことが必要です。特に、次のような点についてはしっかり確認しておきましょう。

・新制度の概要と仕組み
・新制度への移行スケジュール(※法施行前と施行後)
・移行に伴う必要な手続き従業員自身が行わなければならない申請手続きや利用方法等
・新たに必要となるデータ等の管理方法
・現行の健康保険証の取扱いについて
・その他、業務フローを構築するための必要事項

下の図は、マイナ保険証への円滑な移行に向けた今後の対応について、厚生労働省が公表した資料です。これらを参考に、各企業における具体的な対応とスケジュールについて検討してください。

(引用)厚生労働省|マイナ保険証の利用促進等について

(2)従業員への説明と周知

制度を十分に理解し、具体的な対応方針を決定する中で、従業員への説明責任も忘れてはなりません。此度のマイナ保険証への切り替えは、従業員にとっても大きな変化であると共に、従業員自身が行わなければならない手続きが生じるからです。

従って、労務担当者には、マイナ保険証制度の仕組みやメリットの他、利用方法や必要な手続き、現行の健康保険証の取扱い等について従業員に十分な説明をすることが求められます。
制度移行中に想定される懸念事項等を事前に考慮した上で、都度適切な説明と対応ができるよう準備しておきましょう。

(3)新システムにおける業務フローの構築

各企業においては、新制度への移行をスムーズに行うため、前述の(1)(2)を含めた業務フローを構築しておく必要があります。
下の表は、フローを構築・運用する上で検討しておくべき事項をまとめたものです。

検討事項  概要
制度の理解及び必要な業務・手続き等の洗い出しと方針決定(1)で記載した項目の他、次の点についてもしっかり検討しておく。

・主管担当及び窓口担当者の選任
・制度移行における、各企業ごとの全体スケジュールの設定
・マイナ保険証の具体的な申込手順と利用方法
・健康保険情報がシステムに登録されているかの確認方法
・高額医療・限度額適用認定に関すること
・入退職等、異動に伴う必要な手続き(※法施行前と施行後)
・在籍する従業員について必要な手続き(※法施行前と施行後)
具体的な業務フローの検討及び決定下記の点を含め、十分な検討を行った上で、各企業や保険者の実情に応じた業務フローを決定する。

従業員の異動に伴う手続きを迅速に行う体制の整備
・引き続き資格取得、喪失、扶養等の届出手続きは行う必要がある。手続きが完了していない場合、従業員が病院に受診できない可能性があるため、原則5日以内に提出が行えるフローを構築する。
・マイナンバー取扱業務を外部委託している場合であっても、上記と同様の対応ができるよう検討しておく。

現行の健康保険証の取扱いについて
・法施行後、経過措置として最大1年間は引き続き現行の保険証を利用できるため、マイナ保険証での資格確認ができない場合等に備えて、経過措置中も破棄せず併用することが推奨される。これを踏まえて、企業における取扱いについて検討する。
・経過措置中であっても、離職等により資格が喪失された場合は失効となるため、その時点で速やかに回収し、返納する。
・経過措置終了後の保険証の回収については、まず保険者の対応方針を確認し、その上で企業での対応を検討する(※2024年6月時点では、各保険者ホームページにて、回収予定としていない機関があるため)。

マイナ保険証情報の確認
・登録済みの従業員情報の確認
・登録が完了している者については、2024年7月頃から「資格情報のお知らせ」が送付される予定

未登録者の確認
・登録(またはマイナンバーカードの取得自体)が済んでいない従業員の確認について
・未取得・未登録者に対して、取得または登録を促す対応策の検討
・登録後、速やかに確認を行うためのフローの構築

従業員に対するマイナンバーカードの取得及びマイナ保険証利用登録の呼びかけと留意点
・マイナ保険証の申込手続きは、原則として生涯に1回のみで、本人が行わなければならない。
・マイナンバーカードや電子証明書の更新による再度の申込みは不要(※ただし、本人からの申請に基づかずに自治体が新しい住民票コードを再附番するといった稀なケースに限り、再度の申込みが必要)
対応マニュアル等の作成業務フローが固まり次第、各種マニュアル等を作成する。
・業務マニュアル
・従業員への説明資料
・従業員向け手続きマニュアル等
従業員への説明・周知(2)に記載した内容を参考に、新制度に関する説明及び周知内容を決定
説明会等のスケジュール設定と資料等の準備
相談窓口の整備
定期的にマイナ保険証登録の呼びかけや登録情報の確認を行うための体制整備
想定される事案の対応策等マイナンバーカードを取得又は利用登録に応じない従業員への対応策(※1)
・マイナ保険証の利用は個人の自由であるため、マイナンバーカードを取得していない場合や利用登録をしていない者に対して強制はできない。
・上記の者については、保険者より「資格確認書」が交付される。
※「資格確認書」については、次項の「従業員自身が行う対応」にて解説します。
・資格確認書が交付された場合においても、マイナンバーカードの取得や利用登録に応じない従業員への勧奨は継続して行うようにする。
入退職等による切り替え時の注意点
・資格取得申請中の従業員に受診の必要性が出た場合は、手続きが完了しているかどうかの確認を、従業員自身にマイナポータルから行ってもらう。
・前職において資格喪失手続きが完了していない場合は、速やかに喪失届を提出してもらうよう従業員から連絡してもらい、手続きが完了した際はその旨報告させる。
・切り替えが完了していない間に、当該従業員が病院を受診してしまった場合の対応策を検討しておく。
・例えば、前職の資格喪失手続きが完了しておらず、3割負担で受診できてしまった場合等(※この場合、後日、旧保険者に医療費を返還し、その後新保険者に医療費を申請する必要がある)
マイナンバーカードの紛失や、現行の健康保険証を紛失してしまった場合の対応※これについては、次項の「従業員自身が行う対応」で解説します。
高額医療費または限度額適用認定証の申請が必要になる場合
・医療機関がオンライン資格確認システムを導入していない場合、または次の①②のいずれかに当てはまらない場合は、引き続き手続きが必要となる。

①医療機関等の窓口で、マイナ保険証(利用登録済みのもの)を提出し、医療情報の提供に同意した場合
②現行の健康保険証利用で受診した場合であっても、マイナ保険証の利用登録済みかつ医療機関がオンライン資格確認システムを導入しており、かつ医療情報の提供に同意した場合
<その他想定される事案>

・マイナ保険証を使用することによって、窓口への持参が不要となる証類
(各保険者証類他、特定疾病療養受領証等)の確認


・マイナンバーカードの利用者電子証明書の有効期限との関係
有効期限が切れた場合は使用できない。

・マイナンバーカードの暗証番号との関係
暗証番号がロックされても、マイナ保険証としては利用可能。ただし、その他のマイナンバーカード機能は使用できないため再設定が必要となる。

・生活保護や子ども医療費助成との関係
生活保護の医療扶助については2024年3月よりマイナンバーカードと一体化。一方、各自治体が対応している子供医療費証明書については2024年6月現在も検討中

※その他、「厚生労働省|マイナンバーカードの健康保険証利用についてよくある質問」も参考に検討してください。
その他必要事項各企業や保険者ごとのその他必要な対応

なお、各企業や保険者によって必要な業務や検討事項は異なる場合があります。上記はあくまで参考とし、実際の運用においては各企業にて十分に検討してください。

(※1)マイナンバーカードの未取得者及び利用未登録者について
2023年12月時点において、マイナ保険証の利用率は、65~69歳が最も多く、現役層の促進が課題とされています(下記データ参照)。マイナンバーカードの取得や利用登録に応じない従業員については、引き続きマイナ保険証のメリットや利用しないことでのデメリット等を伝え、利用を促す対応を行っていく必要があります。

(引用) 厚生労働省|マイナ保険証の利用促進等について

2.従業員自身が行う対応

(1)マイナンバーカードの取得と保険証利用登録

マイナンバーカードの取得と保険証利用登録は、従業員自身に行ってもらう必要があります。
利用登録の方法は次のとおりです。厚生労働省の特設ページマイナポータルに詳しい手続き内容が掲載されていますので、詳細はそちらをご確認ください。

(引用) 厚生労働省|マイナンバーカードの健康保険証利用について

なお、従業員が利用登録を行う際は、下記の点に留意するようあらかじめ周知しておくとよいでしょう。

◆スマートフォンの保有有無で手続き方法が異なる。
 ・有りの場合:マイナポータルアプリを使用して申込み
 ・無しの場合:医療機関・薬局の受付にあるカードリーダーまたはセブン銀行ATMを利用

◆一度登録したら解除はできない。

◆従業員がマイナンバーの届出を行っていない場合は、資格情報との紐づけができず、マイナ保険証としての利用ができないため、速やかにマイナンバーを届け出てもらう。

(2)資格確認書の発行について

マイナ保険証によるオンライン資格確認を受けることができない状況にある従業員(※2)については、必要な保険診療等を受けられるよう、当該者からの求めに応じて、各保険者から「資格確認書」が無償で提供されます。これにより、医療機関等を受診した際の資格確認が可能です。なお、資格確認書は、書面又は電磁的方法により提供されることとなっています。

資格確認書の主な概要は次のとおりです。

・有効期限:5年以内(最長2029年12月1日まで) ※設定は保険者が行う
・過去の処方薬や特定健診の結果などについてのオンライン資格情報は活用できない。
・施行後最長1年間現行の保険証が使用可能な者については、現時点(2024年6月)では資格確認書を発行しない運用が想定されている。

(※2)マイナ保険証によるオンライン資格確認が受けられない者の例 

  • マイナンバーカードを取得していない、または健康保険証利用登録をしていない者
  • マイナンバーカードの健康保険証利用登録を解除した者    
  • 電子証明書の更新を失念した者    
  • マイナンバーカードを返納した者    
  • マイナンバーカードを紛失した、または更新中の者    
  • 介護が必要な高齢者や子ども等、マイナンバーカードを取得していない者    
  • ベビーシッターなどの第三者が本人に同行して本人の資格確認を補助する必要が ある場合等

(3)こんな時どうする?
マイナ保険証利用登録後、健康保険証を捨ててしまった場合

法施行前と後によって対応が異なります。該当する場合は下記を参考に、必要に応じて行政機関等に確認をした上で対応してください。

なお、いずれの場合においても、外出先での紛失や盗難の場合は、なりすまし防止のため、必ず警察への届出を行うよう指示します。

紛失時期    対応
施行前・オンライン資格確認システムが導入されていない医療機関では、引き続き健康保険証が必要となるため、そもそも捨てないようにあらかじめ周知しておくことが重要
・施行前であれば再発行が可能であるため、見つからない場合は再発行申請をする。
施行後・マイナ保険証を使用する。

◆マイナンバーカードを紛失した場合

マイナンバーカードを紛失した場合は、各自治体における所定の対応・手続きに従って、従業員本人が再発行申請をします。

また、紛失した際は、なりすまし防止のため、必ず警察への届出を行うよう指示してください。

まとめ

この度のマイナ保険証への移行は、転職や離職による健康保険証の切り替えが不要となることから、働き方が多様化する現代社会において、企業と従業員双方にとって多くのメリットがあります。しかしその半面、従業員自身が健康保険証の管理を自己責任で行うことを求める制度であるともいえるため、現段階では、企業の人事部門や保険者に新たな負担が生まれる可能性も否定することはできません。

本制度については今後の課題や懸念が皆無とはいえないものの、現行の健康保険証の発行は2024年12月2日より終了となり、その後1年の経過措置期間を経て、マイナ保険証へと完全移行されます。各企業においては、このような事情も鑑みつつ、早めに整備を進めていくことが重要です。

日常業務をこなしつつ、新ルールへの対応は大変なことだと思いますが、対応漏れがないよう気をつける必要があります。キテラボからも皆さまのお役に立つような情報を発信していきますので、ぜひご活用ください。

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この記事を書いた人

町田 幸枝
株式会社KiteRa エキスパートグループ所属

大学卒業後、情報処理業界にて総務・経理業務に携わる。 育児期間を経て、療養型病院・精神病院・介護老人保健施設などの事務長として5年間施設運営管理や労務管理に従事。その後も外国人に多く接する仕事やマネジメント業務を通して、次第に「働く人のためになる仕事をしたい」という思いが強くなる。そんな中、「安心して働ける世界をつくる」というMissionに深く共感し、2022年KiteRaに入社。 社労士を始めとした有資格者が在籍するKiteRaエキスパートグループに所属し、日々ユーザーのための規程雛形やコンテンツの作成をしている。