TOP労務ガイド人事評価制度の作り方 | 導入手順やポイントをわかりやすく解説!【作り方編】

人事評価制度の作り方 | 導入手順やポイントをわかりやすく解説!【作り方編】

KiteLab 編集部
2023.10.23

自社の経営戦略の実現に不可欠な人事評価制度。しかし、いざ作ろうとしても、何から手を付ければ良いかわからない人事担当者も多いのではないでしょうか?

本記事では、人事評価制度の概要や導入課題のほか、具体的な人事評価手順やポイントをわかりやすく解説します。

そもそも人事評価制度とは?

人事評価制度とは、一定の評価期間における職務の成果・プロセスを対象に、会社が定めた評価基準に基づき社員を評価し、報酬・処遇に反映する制度です。

人事評価制度の基本を詳しく知りたい方は、「人事評価制度とは?概要や仕組み・種類など知るべき基本を簡単解説」をご参考ください。

知っておきたい人事評価制度の導入課題

人事評価制度は、長く運用していると、必ずといっていいほど不満がでるものです。

人事評価制度に関する意識調査によると、人事評価制度に不満を感じる理由は、「評価基準が不明確(62.8%)」が最も高く、次いで「評価者によって評価にばらつきが出て不公平(45.2%)」、「評価のフィードバック・説明が不十分(28.1%)」と続いています。これらの不満要因が生じないよう、導入時から対処をすることが有効です。

ここでは、不満要因の上位3つを対象に、導入課題を解説します。

(参考)Adecco Group:『「人事評価制度」に関する意識調査

評価基準の明確化

評価基準がない、あるいは明確化されていないと、適正な人事評価を運用することはできません。

具体的には、評価者における個人的な主観や恣意的な評価をする恐れもあり、健全な人事評価制度を回していくことは困難な状況に陥ります。被評価者にとっては、どのような成果や能力があれば評価されるかが不透明であることから、不信感が募る恐れもあるでしょう。

誰でも理解できる評価基準を作成し、社内全体にオープンにすることで、透明性の高い人事評価制度を運用することが可能になります。

評価のばらつきを抑える

評価基準を作成しても、評価方法を正しく運用できていなければ、評価のばらつきを抑えることはできません。この評価のばらつきを抑えるには、評価者を対象とした「評価者訓練」を行うことが不可欠です。

評価者訓練には、評価制度の仕組みや評価基準、評価方法の理解を深めてもらうとともに、ハロー効果や中央化傾向、寛大化傾向など評価者が陥りやすい人事評価エラー防止のレクチャーなどを盛り込みましょう。評価者向けに「人事評価制度の手引き」などのマニュアルを作成することも有効です。

評価フィードバックの仕組み化

「人事評価結果のフィードバックをしていない」「自己評価より評価結果が低い理由が不明確」など、評価フィードバックが不十分な場合、人事評価制度への不満を引き起こす原因になります。

自己評価に対して、なぜ決定した評価になったかなどを十分にフィードバックを行うことで、被評価者は、人事評価制度に対する納得感を得ることができます。また、次年度に向けた改善目標を立てることができるなどPDCAを回していけるため、人材育成を効果的に運用していくことが可能になります。

人事評価制度の導入手順

人事評価制度は、「分析→設計→ルール策定→周知・教育→運用」の手順で行うことで、効果的に導入することが可能です。ここでは、人事評価制度の導入手順を解説します。

現状把握/目的の明確化

まずはじめに行うことは、現状把握と目的の明確化です。

自社の経営戦略を実現するために、自社を取り巻く機会・脅威といった外部環境、自社の強み・弱みといった内部環境を分析し、目的を明確化します。「強みを機会に活かす」「脅威は避ける」「弱みは改善する」といったSWOT分析の手法により、自社のあるべき方向性を効果的に導き出すことが可能です。

人事評価制度のみにスポットを当てるのではなく、人事戦略全体のコンセプトを再構築する視点で分析し、目的を明確化してください。

SWOT分析などのフレームワークについて詳しく知りたい方は、「人事評価制度を設計するには?注目の制度や手順、フレームワークを解説!【設計・応用編】」の記事をご参考ください。

人事戦略の策定

目的の明確化ができたら、人事戦略を策定します。

目的を達成するには、中長期的な人員構成のゴールを描き、人事戦略に落とし込みます。具体的には、採用・配置・育成など人材の処遇方針となる「人材ポリシー」、人員配置の計画となる「人材ポートフォリオ」をそれぞれ決定します。また、戦略実現に必要な人材要件を定めておくことも重要です。

人事評価制度の設計

人事戦略の策定ができたら、人事評価制度を設計します。

制度アウトライン設計

人事評価制度は、「等級制度」「評価制度」「報酬制度」の3つの要素で構成されますが、これらの制度は相互に連動し、影響し合う構造となっています。そのため、いきなり個別の設計をするのではなく、アウトラインを設計することが不可欠です。具体的には、評価をどのように報酬や等級に連動させるか、等級をどのように報酬に反映するかなど、人事評価制度全体の概要設計をします。

各制度の設計(等級制度・評価制度・報酬制度)

制度アウトライン設計の次には、「等級制度」「評価制度」「報酬制度」の各制度を設計します。

「等級制度」は、「職能」「職務」「役割」によって区分し、社員を序列化する制度です。「職能資格制度」「職務等級制度」「役割等級制度」のうち、経営目的に適した等級制度を用い、自社に合わせた制度を設計します。

現状分析から設計までの人事評価制度設計について詳しく知りたい方は、「人事評価制度を設計するには?注目の制度や手順、フレームワークを解説!【設計・応用編】」の記事をご参考ください。

評価方法やルールなど規程・ルールの策定

制度設計の次は、評価方法やルール、処遇など規程やルールを策定します。なお、人事評価制度を策定した場合、労働基準法上、必ず就業規則を定めなければならないことに留意し、読み進めてください。

評価方法

定めた評価基準に基づき、適正に人事評価をするための評価方法を定めます。絶対評価と相対評価のいずれを採用するか、評価者の階層(一次・二次など)を何段階にするか、中間評価を実施するかなど、自社に適した運用や評価方法を決定します。

また、評価対象者が多すぎるなど、評価者に過度な負担がかかる場合、まともに面接や評価をしないなど、制度の不満が生じる要因を作ることになりかねません。そのため、評価者に過度な負担がかからないように、評価対象を合理的な範囲にすることも重要です。

不可欠な規程の制定(就業規則)

人事評価制度は、就業規則上、ルールを定めたら必ず記載しなければいけない「相対的記載事項」と位置づけられています。(相対的記載事項:労働基準法 第89条3項2から10項

この就業規則は、主に次のような流れで制定します。

  • 就業規則案の作成
  • 労使交渉
  • 意見書、または同意書の受理
  • 会社の機関決定(就業規則制定の承認)
  • 労働基準監督署へ届け出
  • 規程の周知

なお、就業規則とは、労働条件や規則に関する規則類であり、「就業規則」本則のみを指すものではありません。労働基準法上、別規程とされている「賃金規程」「人事評価規程」なども含めて、就業規則と定義されていることに留意してください。

人事評価制度を適切に運用するためのルール作成

評価方法や規程を定めただけでは、評価のばらつきや属人化などの不具合が発生する恐れがあり、人事評価制度を適切に運用することはできません。

「人事評価制度の手引き」といった人事評価のルールをドキュメントとして作成し、ルールを明文化することで人事評価制度の適切な運用を実現することができます。目標設定の仕方から面接方法、評価エラーを防止するためのルールのほか、一次評価、二次評価の運用、評価集計など、一連の人事評価制度のルールを定めましょう。

社員への周知・教育

作成した評価方法やルールを社員に周知・教育します。

社員への周知は、制度を十分に理解してもらうよう説明会を実施するほか、評価者には評価者訓練を行うことが必要です。とくに、自社の評価基準を正しく理解してもらうことはもちろん、「中央化傾向・寛大化傾向・期末誤差」といった人事評価エラーが生じないよう、評価者を教育しましょう。また、人事評価制度を正しく理解し、不満が生じないようにするための「被評価者訓練」を実施することも有効です。

運用実施

周知・教育の次には、人事評価制度の運用実施です。

人事評価制度を適切に運用するため、人事部門から都度、評価や面接の実施、集計、人事評価シートの回収などの案内を行い、実施結果の確認等も行うことが必要でしょう。また、運用後の効果検証を実施し、PDCAサイクルを回すことで制度の継続的な改善を図ることも重要なポイントです。

人事評価制度の導入ポイント

「公平性」「透明性」「納得性」の3つを兼ね備える

人事評価制度を成功させるポイントは、「公平性」「透明性」「納得性」の3つを兼ね備えることです。

「公平性」は、評価が偏ることなく公平に評価が行われること、「透明性」は、評価方法や評価基準がオープンにされていること、「納得性」は、評価結果に納得感を持たせることです。この3つを兼ね備える人事評価制度を構築することで、人事評価制度の不満を防ぎ、効果的な制度運用が可能になります。

導入初期段階から従業員代表者を巻き込む

制度設計には、極力、導入の初期段階から従業員代表者を巻き込むことが成功の秘訣です。導入初期から従業員代表者に参画してもらうことで、問題意識を共有し、労使で納得性のある人事評価制度を構築していくことが可能になります。また、労使交渉の際、従業員代表が人事評価制度のプロジェクトに参画していたことで、就業規則の制定・改定や制度導入の際、円滑に進めることができるメリットがあります。

まとめ

本記事では、人事評価制度の概要や導入課題のほか、具体的な人事評価手順やポイントをわかりやすく解説しました。

人事評価制度導入成功のカギは、自社の経営目的にあった制度を導入すること。そして、制度への不満を予め防止し、「公平性」「透明性」「納得性」の3つを兼ね備えることです。

本記事を参考に、自社に適した制度を効果的に設計し、円滑に人事評価制度を導入しましょう。

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