育児介護法改正の疑問に答えます 「就業規則の修正箇所は?」「規定例は?」など(第1回)
社会保険労務士の北 光太郎です。
2025年育児介護休業法改正の施行が、いよいよ迫ってきました。
皆さん、準備は順調に進んでいるでしょうか?
「法改正内容は分かったけど、具体的な対応のイメージがつかない」「似たような単語が多く混乱している」という方も多いのではないでしょうか。
2025年育児介護休業法改正について、人事労務担当者が抱える20個の質問について、全4回の記事で回答します。皆様の業務のご参考になれば幸いです。
※2025年育児介護休業法改正の内容については、下記の関連記事をご確認ください。
育児介護休業法改正の7つのポイント!社労士が解説【2025年重要トピック】
2024年の育児介護休業法改正について、【1】子の看護休暇の見直し、【2】所定外労働の制限の対象となる子の範囲の拡大、【3】300人超の企業に育児休業等の取得状況の公表の義務付けなどの7つのポイントを...
Q1就業規則の修正が必要となる箇所について教えてほしいです。
2025年(令和7年)の改正育児・介護休業法によって、就業規則の修正が必要となる主な箇所は以下のとおりです。
(1)子の看護休暇の見直し(2025年4月) (2)育児のための所定外労働の制限(2025年4月) (3)短時間勤務制度(3歳未満)の代替措置(2025年4月) (4)育児・介護のためのテレワーク導入(2025年4月) (5)介護休暇を取得できる労働者の要件緩和(2025年4月) (6)柔軟な働き方を実現するための措置等(2025年10月) |
(1)子の看護休暇見直し
「子の看護休暇」は2025年4月から「子の看護等休暇」に名称が変更され、以下のように拡充されます。
改正内容 | 改正前 | 改正後 |
対象となる子の範囲の拡大 | 小学校就学まで | 小学校3年生修了まで |
取得事由の拡大(③④を追加) | ①病気・けが②予防接種・健康診断 | ①病気・けが②予防接種・健康診断③感染症に伴う学級閉鎖等④入園(入学)式、卒園式 |
労使協定による勤続6ヶ月未満除外規定の廃止 | <除外できる労働者>①週の所定労働日数が2日以下②勤続6ヶ月未満 | <除外できる労働者>①週の所定労働日数が2日以下※②を撤廃 |
名称変更 | 子の看護休暇 | 子の看護等休暇 |
就業規則では、記載されている名称を変更するとともに、対象となる子の範囲や取得事由を修正する必要があります。
また、労使協定を締結し、勤続6ヶ月未満の労働者を除外する旨を記載している場合は項目の削除も必要です。
ー就業規則の記載例ー 1.小学校第3学年修了までの子を養育する従業員(日雇従業員を除く)は、次に定める当該子の世話等のために、就業規則第○条に規定する年次有給休暇とは別に、当該子が1人の場合は1年間につき5日、2人以上の場合は1年間につき10日を限度として、子の看護等休暇を取得することができる。この場合の1年間とは、4月1日から翌年3月31日までの期間とする。 一 負傷し、又は疾病にかかった子の世話 二 当該子に予防接種や健康診断を受けさせること 三 感染症に伴う学級閉鎖等になった子の世話 四 当該子の入園(入学)式、卒園式への参加 ただし、労使協定により除外された、1週間の所定労働日数が2日以下の従業員からの申出は拒むことができる。 |
出典:厚生労働省「育児・介護休業等に関する規則の規定例[簡易版]」
(2)育児のための所定外労働の制限
所定外労働の制限(残業免除)は、現行法では3歳までの子を養育する労働者が対象ですが、改正後は小学校就学前の子を養育する労働者まで拡大されます。
改正内容 | 改正前 | 改正後 |
請求可能となる労働者の範囲の拡大 | 3歳未満の子を養育する労働者 | 小学校就学前の子を養育する労働者 |
ー就業規則の記載例ー
1 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する従業員(日雇従業員を除く)が当該子を養育するため、又は要介護状態にある家族を介護する従業員(日雇従業員を除く)が当該家族を介護するために請求した場合には、事業の正常な運営に支障がある場合を除き、所定労働時間を超えて労働をさせることはない。 2 請求をしようとする者は、1回につき、1か月以上1年以内の期間について、制限を開始しようとする日及び制限を終了しようとする日を明らかにして、原則として、制限開始予定日の1か月前までに、育児・介護のための所定外労働制限請求書を人事担当者に提出するものとする。 |
出典:厚生労働省「育児・介護休業等に関する規則の規定例[簡易版]」
(3)短時間勤務制度(3歳未満)の代替措置
3歳未満の子を養育し、短時間勤務制度の適用が困難と認められる業務に従事する労働者がいる場合は、労使協定を締結して短時間勤務制度の除外規定を設けたうえで、代替措置を講じることとなります。2025年4月以降は、その代替措置にテレワークが追加されます。
改正内容 | 改正前 | 改正後 |
代替措置のメニューを追加 | <代替措置>①育児休業に関する制度に準ずる措置②始業時刻の変更等 | <代替措置>①育児休業に関する制度に準ずる措置②始業時刻の変更等③テレワーク |
ー就業規則の記載例ー
1 3歳に満たない子を養育する従業員は、申し出ることにより、就業規則第○条の所定労働時間について、以下のように変更することができる。 所定労働時間を午前9時から午後4まで(うち休憩時間は、午前12時から午後1時までの1時間とする。)の6時間 とする(1歳に満たない子を育てる女性従業員は更に別途30 分ずつ2回の育児時間を請求することができる) ~省略~ 2 1にかかわらず、次のいずれかに該当する従業員からの育児短時間勤務の申出は拒むことができる。 一 日雇従業員 二 1日の所定労働時間が6時間以下の従業員 三 労使協定によって除外された次の従業員 (ア)入社1年未満の従業員 (イ)1週間の所定労働日数が2日以下の従業員 (ウ)業務の性質又は業務の実施体制に照らして所定労働時間の短縮措置を講ずることが困難と認められる業務として次に定める業務に従事する従業員(ⅰ〇〇〇業務、ⅱ〇〇〇業務、ⅲ…) 3 2の三(ウ)により、3歳未満の子を養育する従業員のうち、育児短時間勤務が困難な業務に従事する者は、代替措置としてテレワークの利用を可能とする。 |
出典:愛知労働局 雇用環境・均等部 指導課「改正法施行までの対応ポイントについて」
(4)育児・介護のためのテレワーク導入
現行法では、小学校就学までの子を養育する労働者に関して、育児目的の休暇制度や時差出勤の制度、フレックスタイム制などの措置を講じる努力義務が定められています。
今回の改正では、3歳未満の子を養育する労働者や要介護状態の対象家族を介護する労働者がテレワークを選択できるよう措置を講じることが事業主に努力義務化されます。
テレワークを導入する場合は、就業規則にテレワークの措置を受けることができる旨を記載するほか、申出の方法やテレワークを実施している労働時間の取り扱いなどを明示するとよいでしょう。
ー就業規則の記載例ー 第〇条 テレワークの措置 1 3歳未満の子を養育する従業員または要介護状態の対象家族を介護する労働者は、申し出ることによりテレワークの措置を受けることができる。 2 テレワークの措置内容及び申出については、次のとおりとする。 一 対象従業員は、本人の希望により、テレワークを行うことができる。 二 テレワークは、時間単位で始業時刻から連続又は終業時刻まで連続して実施することができるものとする。 三 テレワークの実施場所は、従業員の自宅、その他自宅に準じる場所(会社の認めた場所に限る。)とする。 四 テレワークを行うものは、原則として勤務予定の2営業日前までに、テレワーク申出書により所属長に申し出なければならない。 3 本措置の適用を受ける間の給与及び賞与については、通常の勤務をしているものとし、減額しない。 4 定期昇給及び退職金の査定にあたっては、本規定の適用を受ける機関は通常の勤務をしているものとみなす。 |
出典:愛知労働局 雇用環境・均等部 指導課「改正法施行までの対応ポイントについて」
(5)介護休暇を取得できる労働者の要件緩和
現行法では、介護休暇を取得できる労働者として労使協定を締結することで「勤続6ヶ月未満の労働者」を除外できていましたが、それが廃止になります。そのため、労使協定で除外できる労働者は週の所定労働時間が2日以下の労働者のみとなります。
改正内容 | 改正前 | 改正後 |
労使協定による勤続6ヶ月未満除外規定の廃止 | <除外できる労働者>①週の所定労働日数が2日以下②勤続6ヶ月未満 | <除外できる労働者>①週の所定労働日数が2日以下※②を撤廃 |
ー就業規則の記載例ー 1 要介護状態にある家族の介護その他の世話をする従業員(日雇従業員を除く)は、就業規則第○条に規定する年次有給休暇とは別に、対象家族が1人の場合は1年間につき5日、2人以上の場合は1年間につき10日を限度として、介護休暇を取得することができる。この場合の1年間とは、4月1日から翌年3月31日までの期間とする。 ただし、労使協定により除外された、1週間の所定労働日数が2日以下の従業員からの申出は拒むことができる。 |
出典:厚生労働省「育児・介護休業等に関する規則の規定例[簡易版]」
(6)柔軟な働き方を実現するための措置等
2025年10月から、事業主に対し法令が定める次の措置の中から、2つ以上の措置を選択して講じたうえで、労働者がそのうち1つを選択して利用できるようにすることが義務付けられます。
事業主が講じる措置の内容(選択肢)
- 始業時刻変更等の措置
- 在宅勤務等の措置
- 育児のための所定労働時間の短縮措置(短時間勤務制度)
- 労働者が就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇を与えるための措置(子の看護等休暇、介護休暇、年次有給休暇として与えられるものを除く)
- 保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与
なお講じる措置を選択する際は、過半数労働組合等から意見を聴取する必要があります。
ー就業規則の記載例ー 「始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ、テレワークの措置を講じた例」 1 3歳から小学校就学の始期に達するまでの子を養育する従業員(対象従業員)は、柔軟な働き方を実現するために申し出ることにより、次のいずれか1つの措置を選択して受けることができる。 一 始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ 二 テレワーク 2 1にかかわらず、日雇従業員からの申出は拒むことができる。 3 1の一に定める始業・終業時刻の繰上げ・繰下げの措置内容及び申出については、次のとおりとする。 一 対象従業員は、申し出ることにより、就業規則第◯条の始業及び終業の時刻について以下のように変更することができる。 ・通常勤務=午前8時30分始業、午後5時30分終業 ・時差出勤A=午前8時始業、午後5時終業 ・時差出勤B=午前9時始業、午後6時終業 ・時差出勤C=午前10時始業、午後7時終業 二 申出をしようとする者は、1回につき1年以内の期間について、制度の適用を開始しようとする日及び終了しようとする日並びに時差出勤Aから時差出勤Cのいずれに変更するかを明らかにして、原則として適用開始予定日の1か月前までに、育児時差出勤申出書により人事担当者に申し出なければならない。 |
出典:厚生労働省「育児・介護休業等に関する規則の規定例[簡易版]」
Q2 規定例など、参考にできる資料はありますか?
2025年の改正育児介護休業法に対応した規定例は厚生労働省が公表している資料が参考になります。
厚生労働省:「育児・介護休業等に関する規則の規定例(簡易版)」
ただし、労使協定により除外できる労働者を定めているか、または努力義務であるテレワークを導入するか否かなど、企業の判断によって記載内容が異なるので注意が必要です。
また、初めてテレワークを導入する場合は、テレワークの申請方法や服務規律、通勤手当の取り扱いなども検討し、それらを就業規則に記載することが必要になるでしょう。
育児・介護休業法の改正に伴い、厚生労働省の育児・介護休業等に関する規則に記載されている内容以外にも修正が必要になる可能性があります。自社の就業規則を照らし合わせながら修正を行いましょう。
キテラボ編集部より
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規程管理システムとは!?社労士が人事労務担当者向けにメリットを解説します
規程管理システムとは、各企業が独自に定める社内ルール「社内規程」の作成・改定・管理を行うためのシステムのことです。専用のシステムを使うことで、効率的かつスムーズな作業が実現できます。
※育児介護休業法改正の内容については、下記の資料(23ページ)でまとめています。合わせてご確認ください。

2025年施行 育児介護休業法改正
この資料でわかること 2025年4月1日施行の改正内容 2025年10月1日施行の改正内容 雇用保険法の改正内容 企業の対応が必要なこと 出生後休業支援給付金の紹介 など 2025年の育児・介
※第2回、第3回、第4回は近日公開予定です。