TOP労務コラムコロナ禍を経て考える、外国人雇用と就労環境の整備

コロナ禍を経て考える、外国人雇用と就労環境の整備

KiteLab 編集部
2023.02.02

1.外国人労働者を取り巻く現状

2020年の新型コロナウイルス以降、外国人労働者を取り巻く状況は新たな局面を迎えています。長期間に渡った入国制限に加え、賃金・待遇面においてより好条件の国を選択する外国人も増えつつあり、「外国人労働者の日本離れ」という言葉も耳にするようになりました。さらに、令和3年10月に発表された「外国人雇用状況の届出状況まとめ」では、この日本離れの兆候を示唆する結果が見受けられます。厚生労働省はこの中で、届出状況のポイントについて次のように述べています。

出典:厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況まとめ(令和3年10月末現在)」
※参考:令和5年1月発表 厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況まとめ(令和4年10月末現在)」

これを見ると、外国人労働者数は令和3年(2021年)時点で最高値を更新しているものの、伸び率については低下傾向にあることがわかります。令和4年(2023年)においては、水際対策の緩和により外国人労働者数は回復の兆しを見せてはいるものの、円安の影響で、労働力確保をめぐる他国との競争は益々加速していく傾向にあります。

次に、事業者側の意識についても考えてみたいと思います。
外国人雇用に関する企業の意識・実態調査(株式会社パーソル総合研究所|2019年9月17日データ)」によると、既にコロナウイルス以前の段階で、外国人雇用に前向きな企業と消極的な企業の二極化が進んでいた実態が浮き彫りになっていました。元々外国人雇用に消極的であった企業にいたっては、新型コロナウイルス以降、その関心がますます薄れてしまっていることも懸念されるのです。

しかしながら、日本の労働力不足が目の前に迫っている事実に変わりはありません。ならばむしろ、この機会を好機ととらえ、優秀な外国人労働者を一人でも多く採用するメリットに目を向けていくことが、今後の事業の展望に大きな影響を与えていくのではないでしょうか。

2.外国人労働者の就労環境整備

(1)外国人雇用管理指針

日本の総人口は2008年をピークに減少に転じています。これを踏まえ、政府は今後の深刻な労働力不足の対策として「働き方改革実行計画」に「外国人受入れ」を盛り込み、外国人の積極的な雇用に向け、さまざまな取り組みを行なってきました。

その中で厚生労働省は、外国人雇用管理が事業主の努力義務であることを明確にするため、「外国人雇用管理指針」を発出し、その趣旨を次のように定めています。

出典:厚生労働省|外国人の雇用「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針(厚生労働省告示106号/平成31年3月29日)」全文

この指針は、外国人労働者の就労環境の整備や支援について国が示したルールです。従って、外国人を一人でも雇用する事業主は必ず目を通しておくべきものであると言えます。

外国人労働者を雇入れる際は、下記の項目を必ず確認しておきましょう。

(2)外国人労働者のトラブル事例

◆賃金不払いによるトラブル


出典:外国人労働者の雇用をめぐる相談事例—東京都の労働相談から|独立行政法人労働政策研究・研修機構

外国人労働者雇用におけるトラブル要因は一概に限定できませんが、その根底に共通してあるのは文化や価値観、言語の違いです。

この事例では、当然、労働法規を熟知せず、採用時に提示した給与額を支払わなかった事業主側に非がありますが、ここで注目すべきは「給与や退職時のルールを面接時に口頭のみで伝えていた」という点です。相手が外国人の場合、口頭での取り交わしだけでは双方の認識に大きくズレが生じてしまうリスクを、事業主側が十分に認識していなかったことにも要因があったと言えます。

例えば日本人の採用においても、雇用契約はできる限り書面で取り交わすことが望ましいとされています。このことからも、外国人労働者の雇入れにいたっては、情報を正確に伝えることがいかに重要であるかがおわかりいただけると思います。

外国人であっても、日本の事業所において雇用される限りは、当然、労働基準法を始めとする労働法規が適用されます。こうしたトラブルを回避するためには、文化や価値観、言語の違いを踏まえ、日本の労働制度を外国人でも理解しやすい形で伝えていくことが大切です。

3.活用しましょう~外国人労働者の人事・労務に関する3つの支援ツール~

外国人雇用管理指針にも示されているとおり、外国人労働者の就労環境整備にはさまざまな取組みが必要となります。その中でも、労働条件の明示や労働基準法等の周知は、極めて重要でありながら実際行なうにあたっては難しいポイントです。

そこで厚生労働省は、外国人労働者を雇用する事業主に向けて「外国人労働者の人事・労務に関する3つの支援ツール」を作成し、活用を呼びかけています。

このツールは、人事・労務に関する多言語による説明や、文化ギャップを埋めるために使用することを目的としたもので、概要は次のようになっています。

出典:厚生労働省三重労働局「外国人労働者の人事・労務支援ツールを作成しました!」

ツールの詳しい内容については厚生労働省ホームページをご確認ください。ここでは、各ツールの概要説明に共通して出てくる「やさしい日本語」について取り上げてみたいと思います。「やさしい日本語」はその周知が未だ十分ではないのが現状ですが、外国人労働者を雇う際にはぜひ知っておいていただきたい用語のひとつです。

それでは、やさしい日本語とは具体的にどのようなものなのか、就業規則を例に、作成時のポイントも含めて簡単にご紹介していきます。

4.まとめ

労働条件通知書や就業規則は、法律上の観点からだけではなく、労務トラブルを回避する意味合いにおいても、事業主が労働者に必ず周知すべきものです。しかし、こういった日本の労働制度や規程にまつわる文書には、日本人であっても理解しづらい表現が意外と多くあるものです。そう考えると、労働条件通知書や就業規則は、外国人労働者にとって非常に理解が困難なものであることがわかります。重複しますが、外国人労働者がきちんと事業所のルールを理解した上で働くためには、多言語翻訳に加えて、やさしい日本語を使った説明や文書作成を行うなど、外国人労働者にとって何よりもわかりやすいものとなっていることが重要です。

また、やさしい日本語の使用は雇用契約や労働制度の理解だけにとどまるものではありません。外国人労働者だけではなく、同じ職場で働く日本人労働者にとってもメリットがあるということを、ぜひ念頭に置いておいていただければと思います。

例えば多言語が整備された職場であっても、日本で働く限り、日本語でのコミュニケーションが必要な場面は必ず出てくるものです。やさしい日本語は、職場内のコミュニケーションを円滑にし、共生していくためのツールとしても役立ちます。

この他にも外国人労働者を雇用するにあたっては、在留資格など留意すべきポイントが多くあります。まずは法制度を正しく理解し、文化や言語の違いに配慮した上で就労環境を整備していくことが必要です。コロナ禍を経て、貴重な働き手である外国人の目は既に他国へと向かい始めています。今だからこそ、一人でも多くの優秀な外国人人材の獲得に目を向けてみてはいかがでしょうか。

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