フリーランス受入れの際に気を付けたい偽装請負!労働者性の判断基準について。
働き方の多様化(フリーランスという選択肢)
テクノロジーの進化に伴い、リモートワークの広がりをはじめとした働き方の多様化が進んでいます。
終身雇用は崩れ始め、昨今における副業・兼業の人気の高まりも相まって、もはや「雇用」に固執する価値観が薄れてきた印象すらあります。
企業側においても、ベンチャー企業などでは、優秀な人材をいわゆる「フリーランス」として活用する流れが広がっており、フリーランスとしての働き方を選択することは、今や珍しいものではなくなってきました。
フリーランスにおける法整備
しかしながら、2020年5月に実施された「フリーランス実態調査結果」(内閣官房日本経済再生総合事務局)によれば、フリーランスのうち約4割が、取引先とのトラブルを経験しています。なお、トラブル経験者のうちの約6割は、業務委託契約書が未作成であったり、契約書を交わしていた場合であっても、取引条件が明確に記載されていなかったことが分かっています。
こういった流れを受け、問題行為を明確化し、規制するため2021年3月に、内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省が連名で「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」を公表しました。
更に、政府は本年9月に、フリーランス保護に向けた新たな法制度の方向性を明らかにしています。
新たな法改正による具体的施策はこれからとしても、今後、取引適正化を通じて、個人がフリーランスとして働く場合の環境整備を目的とした法規制が一層強化されることは確実です。
そこで、今回はフリーランス(業務委託契約)として人材を活用する上での、労働関係諸法令における法的な留意点「労働者性の判断」について解説します。
キテラボ編集部より(2024年8月追記)
2024年11月から施行されるフリーランス新法については、下記にまとめています。
合わせてご確認ください。
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ガイドラインの対象となるフリーランスの定義
フリーランスガイドラインでは、同ガイドラインの適用対象とする「フリーランス」は『実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者』と定義付けされています。
ただし、法令上「フリーランス」の定義を定めたものは現時点では存在せず、同ガイドラインの定義もまた、法令上の根拠を有するものではありません。したがって、同ガイドラインにおける定義は、政策的な目的から設定された定義であると理解すべきでしょう。
フリーランスは、先の定義にある通り、広く一般的に「実店舗を持たずに個人で事業を行う者」を指すものであると認識されており、雇用という働き方ではないため、原則として労働基準法などの労働関係法令が適用されないものと理解されています。
つまり、自由な働き方ができる反面、労働基準法による保護がなく、弱い立場に置かれやすいという側面も持っており、既述のトラブル直面につながると推測されます。
フリーランス受入れの際、社会的問題となっている「偽装請負」
フリーランス受入れの際、社会的な問題になっているものとして「偽装請負」があります。かつては労働者派遣事業との関係で主に論じられてきましたが、ここでは広義の意味での偽装請負の問題について触れます。
偽装請負とは、実態は雇用契約であるにもかかわらず、企業側が労働関係諸法令の規定の適用を「免れる目的」で、会社に有利な条件で人材を事業のために使役するため「業務委託」等の形式で仕事をさせることを指します。
現行法上における「雇用」に該当する場合の判断基準
偽装請負とされ、労働者性が認められるのか、または適法な契約なのかの判断は簡単ではなく、実際の契約内容や運用を詳細にみて判断することになりますが、同ガイドラインで示されている「雇用」に該当する場合の判断基準を紹介します。
労働関係法令の適用に当たっては、個々の働き方の実態に基づいて、「労働者」なのかが判断されることになります。以下に示す判断基準により、「労働者」に該当すると判断された場合には、労働基準法や労働組合法等の労働関係法令に基づくルールが適用されることとなります。
企業としては、意図せず偽装請負にならないためにも、働き手に対する指揮命令権や当事者間に求められる責任などの違いは十分に理解しておかなければなりません。
出典:フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン概要版パンフレット(内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省)
まとめ
偽装請負の最大の問題点は、優位的立場を利用した企業側による制度の悪用により「働き手の利益が害される」という点にあります。
冒頭に述べた通り、新しい形態の働き方が次々に出現し、自らフリーランスを選択する人材は増加の一途をたどっています。加えて、インターネットなどから情報が入手しやすくなったことで、働き手側の権利意識が高まってきています。
企業のコンプライアンス(法令順守)への社会的要求は日々強くなってきています。
今後の新たな法改正による執行強化を注視する必要があることは言うまでもありませんが、より一層、企業として、新しい働き方に対する柔軟な対応と適切な施策を考慮することが肝要であると考えます。