育児介護休業法改正の7つのポイント!社労士が解説【2025年重要トピック】

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佐々木 光成

社会保険労務士の佐々木 光成(株式会社KiteRa)です。

育児介護休業法は、たびたび改正が行われており、かつ、実務上の影響範囲も非常に大きいです。
2024年の法改正は、2025年4月と10月の二段階で対応が必要になります。

本記事では法改正のポイント7項目を解説し、人事労務担当者として、準備しておくべきことを紹介していきます。

施行日改正事項
2025年4月1日【1】子の看護休暇の見直し
【2】所定外労働の制限の対象となる子の範囲の拡大
【3】300人超の企業に育児休業等の取得状況の公表の義務付け
【4】テレワークの推進
【5】介護離職防止のための措置の義務化
2025年10月1日(予定※)【6】仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮の義務付け
【7】柔軟な働き方を実現するための措置の義務付け

※公布日から1年6か月を超えない範囲内で政令で定める日とされていますが、第70回労働政策審議会雇用環境・均等分科会の政令案要綱で「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律(令和六年法律第四十二号)附則第一条第二号に掲げる規定の施行期日は、令和七年十月一日とすること。」とされました。正式な施行日は政令の公布時、官報等でご確認ください。

育児介護休業法改正の経緯

2024年(令和6年)の第213回国会で「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律」が可決・成立し、5月31日に公布されました。これにより、育児介護休業法、次世代法、雇用保険法などが改正されることとなりました。

※改正雇用保険法については、下記の記事で詳しく解説しています。

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改正雇用保険法が2024年4月に成立!被保険者の「週10時間以上」対象拡大など7個のポイントを解説

雇用保険の適用拡大だけでなく、自己都合離職者の給付制限の見直し、教育訓練給付の拡充などのポイントも社労士が解説します。人事・労務関連の基礎知識から、社内規程の作成や見直しに関わる法改正の最新情報まで、...

(1)仕事と育児の両立について

近年、育児に関する法改正は何度も行われていますが、直近数年のものを挙げると、平成28年には子の看護休暇の半日単位の取得を認め、平成29年には保育所に入れない場合に育児休業期間を延長することができるようにするとともに、男性への育児参加を促進するため育児目的休暇制度を設ける努力義務を課しています。2021年には産後パパ育休の創設とともに、育児休業制度等の個別周知や意向確認の措置も義務化されました。このような取り組みは行われているものの、2021年度の育児休業取得率は男女差が大きく、女性85.1%、男性13.97%となっています。その他、育児休業の取得期間や家事関連時間などにも男女差が見られるという調査結果が出ています(参考:厚生労働省 育児・介護休業法の改正について。)。その他、男性の両立支援制度のニーズが増加していること、男女ともに育児期では柔軟な働き方を希望していること、小学校就学以降の子の看護にも休暇のニーズが存在することなど、多様な要望があることがわかっています。

(2)仕事と介護の両立について

介護休業制度は、労働者が家族の介護を理由に雇用継続が困難になることを防ぐため、平成7年に創設されました。2016年には認知症などによる長期介護のニーズに対応するため上限93日・3回の分割取得を可能にすることや介護休暇を半日単位で取得できるようにするなどの改正が行われました。一方、多くの企業が介護休業制度を整備しているにもかかわらず、制度の利用が進まず、介護を理由に離職する人が多い現状が指摘されています。これは、企業内で制度が利用しにくいことや、介護と仕事の両立支援制度の理解不足が原因とされており、厚生労働省では制度理解を促進するためリーフレット等を作成するといった措置を講じていました。

(3)育児・介護と仕事の両立の課題について

(1)(2)などの状況から、「今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会報告書」では以下のような課題があるとされています。

①育児に関する課題

・男性の育児休業取得率が低いこと:男性の育児休業取得が進んでおらず、女性に育児負担が偏っていること。

・柔軟な働き方への対応が不十分であること:残業免除は子供が3歳になるまでに限られている。

・休暇制度が使いにくいこと:子の看護休暇が小学校就学後の子を対象としておらず、取得事由も限定されている。

・多様な家庭状況への対応が不足していること:障害児や医療的なケアを要する子を養育する家庭への支援が不十分である。

②介護に関する課題

・介護離職の防止:介護休業や介護休暇制度の利用が進んでおらず、介護を理由に離職する労働者が多い。

・制度の認知不足:介護に直面する労働者や職場の上司、事業主の制度理解が不十分である。

・職場での利用促進の難しさ:介護保険や両立支援制度が職場で円滑に利用される環境が整っていない。

こうした課題を踏まえ、男性の育児参加を支援する制度や職場全体での体制整備が重要とされました。また、コロナ禍で広がったテレワークも育児・介護支援に有用であるとして定着が期待されていることから、今回の育児介護休業法を改正することとなりました。

2025年4月1日改正について

【1】子の看護休暇の改正について

(出典:厚生労働省 育児・介護休業法、次世代育成支援対策推進法改正ポイントのご案内

現行の子の看護休暇の対象となる子の範囲は小学校入学前までの子ですが、今回の改正により小学3年生終了までとなります。「小1の壁」と言われる小学校低学年時の両立支援が課題となっていることから、継続就業しながら子育ての時間を確保するため、子の看護休暇の対象となる子を小学校3年生終了時まで延長したものと思われます。

また、コロナ禍では、小学校の一斉休校に伴い、多くの保護者が休暇を取得せざるを得なかったことを踏まえ、感染症に伴う学級閉鎖にも子の看護休暇を活用できるように見直しが行われました。また、取得事由には、子の行事(入園式・入学式・卒園式)も追加されています。

その他、労使協定の締結により、除外できる対象労働者の「引き続き雇用された期間が6か月未満」という項目が撤廃されます。そのため、改正後は、入社間もない労働者であったとしても休暇を与える必要があります。

(介護休暇も同様に改正されております。)

【2】所定外労働の制限の対象となる子の範囲の拡大

(出典:厚生労働省 育児・介護休業法、次世代育成支援対策推進法改正ポイントのご案内

現行の所定外労働の制限は3歳に満たない子を養育する労働者が対象となっていますが、法改正により小学校就学前の子までが対象となります。時間外労働の制限、深夜業の制限は現行でも小学校就学前の子が対象となっているので、利用可能期間が揃うことになりました。

時間外労働を前提としたフルタイム勤務の職場においては、女性正社員を中心に短時間勤務からフルタイム勤務をためらうことで、短時間勤務の利用が長期化している状況があると考えられています。そのため、子供が3歳を迎えた後も、残業のない働き方を実現することで、短時間勤務からフルタイム勤務への移行をスムーズにするという趣旨の改正です。

【3】300人超の企業に育児休業等の取得状況の公表の義務付け

(出典:厚生労働省 育児・介護休業法、次世代育成支援対策推進法改正ポイントのご案内

2023年4月から従業員数1000人を超える企業には男性労働者の育児休業取得率等の公表が義務付けられています。今回の改正により従業員数300人超の企業にも公表が義務付けられることとなります。

【4】テレワークの推進

今回の法改正により「育児短時間勤務の代替措置」にテレワークが追加されるとともに、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者に対してテレワークの努力義務が課せられます。

①育児短時間勤務の代替措置としてテレワークの追加

会社は3歳に満たない子を養育する労働者に対して短時間勤務措置を講じる義務があります。ただし、労使協定により「雇用された期間が1年未満であるもの」、「週の所定労働日数が2日以下のもの」、「業務の性質又は業務の勤務体制から考慮すると、所定労働時間の短縮制度の適用が困難だと認められる業務に携わるもの」は短時間勤務措置から除外できるとされています。除外する場合、次の措置を講じる必要があります。

・育児休業に関する制度に準ずる措置
・フレックスタイム制
・時差出勤
・保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与

上記にテレワークが加わることになります。

②3歳に達するまでの子を養育する労働者に対するテレワークの努力義務化

現行法では、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者には次のような措置を講じる努力義務が定められています。

・育児目的休暇

・子供の年齢に応じて、育児休業に関する制度、フレックスタイム制、時差出勤制度等の一定の措置のうち必要なもの

今回の法改正によって、3歳に満たない子を養育する労働者について在宅勤務を講じる努力義務が追加されます。

【5】介護離職防止のための措置の義務化

(出典:厚生労働省 育児・介護休業法、次世代育成支援対策推進法改正ポイントのご案内

上述の「(2)仕事と介護の両立について」でも述べていますが、介護に関する制度等を利用しないまま介護離職に至るようなケースを防止するため、仕事と介護の両立支援制度の周知や雇用環境の整備を行うことが必要であるという趣旨から、介護離職を防止するための措置が義務化されることになりました。

現行法では、育児休業等に関する制度について個別に周知し、育児休業取得の意向を確認することが義務付けられていますが、介護についても、ほぼ同様の措置が義務付けられることになります。

①個別周知・意向確認の措置、早期の情報提供について

介護に直面した労働者が申出をした場合、その労働者に対して仕事と介護の両立支援制度等に関する情報を個別に周知する必要があります。その際、両立支援制度の目的を十分に説明した上で、仕事との両立に必要な制度が選択できるよう、労働者に働きかけることが必要でしょう。意向確認の方法、介護が必要となったと申し出た労働者へ知らせる内容は次のように定められる予定です。

誰に?家族が介護を必要とする状況に至ったことを申し出た労働者
何を?①~③の全てを周知(説明)することが必要。①介護休業に関する制度及び介護両立支援制度等②介護休業申出及び介護両立支援制度等の利用に係る申出の申出先③介護休業給付金に関すること(育児に関する申出と違い、保険料免除の説明はありません)
いつ?申出たとき
どうやって?①面談②書面の交付③FAX④電子メール等以上のいずれか(③、④は労働者が希望した場合)

早期の情報提供は40歳に達した日の属する年度の初日から末日までの期間、または40歳に達した日の翌日から起算して1年間とされる予定です。なお、提供する情報と提供方法は家族が介護を必要とする状況に至ったことを申し出た場合と同様となる予定です。

②雇用環境の整備

会社は、労働者からの介護休業の申出が円滑に行われるようにするため、次のいずれかの措置を講じなければなりません。

・介護休業に係る研修の実施

・介護休業に関する相談体制の整備

・その他、省令で定める措置

 (介護休業取得に関する事例を収集し公表すること、介護休業に関する制度や休業取得促進に関する方針の周知とされる予定です)

育児休業等の利用に関する雇用環境の整備は既に義務付けられています。制度の大枠は育児・介護、どちらも同様なので、既存の仕組みを活用することが考えられます。

③テレワークの努力義務化

現状、家族を介護する労働者に対して、介護休業若しくは介護休暇に関する制度又は介護のための所定労働時間の短縮等の措置に準じて、介護を必要とする期間、回数などに配慮した必要な措置を講じるように努めることが求められています。

今回の法改正で、家族を介護する介護休業をしていない労働者について、その労働者の申出に基づきテレワークをさせる努力義務が課せられます。

④介護休暇の協定除外範囲の変更

現行法は、子の看護休暇と同様、労使協定で次に該当する労働者は制度利用の対象外とすることができます。

・継続して雇用された期間が6か月未満の労働者

・週の所定労働日数が2以下の労働者

・時間単位で介護休暇を取得することが困難と認められる業務に従事する労働者 (時間単位についてのみ)

このうち「継続して雇用された期間が6か月未満の労働者」の除外要件が撤廃されます。そのため、改正後は入社して間もない労働者であっても、申出があればすぐに介護休暇を取得させる必要があります。

2025年10月1日(予定)改正

【6】個別の意向の聴取と配慮の義務付け

(出典:厚生労働省 育児・介護休業法、次世代育成支援対策推進法改正ポイントのご案内

労働者が妊娠・出産等の申出をした場合、育児休業に関する制度等について個別周知することや育児休業取得の意向確認をすることが既に義務付けられています。

※「個別の周知・意向確認の措置」については、下記の記事にまとめています。

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2022年4月1日から義務化される「個別の周知・意向確認の措置」とは?

企業のバックオフィスを支える人事・労務の皆さんに向けて、社内規程に関する最新情報や役立つ知識をお届けします。法改正やトレンド、実務に役立つヒントを分かりやすく解説し、専門家の知恵とアドバイスを通じて、...

今回の改正により、仕事と育児の両立にかかる就業条件に関する個別の意向を聴取することが義務付けられます。さらに、意向の聴取後、その労働者について就業条件を定める際、労働者の意向に配慮しなければならないとされています。配慮すべき事項として始業・終業の時刻、就業の場所、業務量、制度等の利用期間などが挙げられています。その他、労働者の子に障害がある場合や医療的ケアを必要とする場合、労働者がひとり親家庭の親である場合などについて、望ましい対応が指針によって定められる予定となっています。

(厚生労働省 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 及び 次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律の概要

【7】柔軟な働き方を実現するための措置等の義務化

(出典:厚生労働省 育児・介護休業法、次世代育成支援対策推進法改正ポイントのご案内

子供の年齢に応じて柔軟な働き方を活用し、所定労働時間を短縮せずに仕事と育児を両立できるようにするための措置です。

①柔軟な働き方を実現するための措置の選択肢

・始業時刻等の変更

・テレワーク等(10日/月)

・保育施設の設置運営等

・新たな休暇の付与(10日/年)

・短時間勤務制度

上記の措置の中から2以上の制度を選択して措置しなければならず、労働者はその中から1つ選択することができます。

テレワークの10日は最低限度であり、より高い頻度で利用することが出来ることが望ましいと、指針で定められる予定です。また、短時間勤務制度は原則として1日6時間とすることとした上で1日5時間や7時間とする措置、短時間勤務とする曜日を固定する措置、週休3日とする措置などをあわせて講じるのが望ましいとされる予定です。

②労働者代表からの意見聴取

本制度の措置を選択し講じるときは、あらかじめ労働者の過半数の代表等から意見を聴かなければならないとされています。

③制度の個別周知・意向確認等

労働者が本制度の措置をスムーズに選択できるように3歳に満たない子を養育する労働者に対して個別の周知と意向確認を行わなければなりません。

法改正までにやっておくべきこと

今回の法改正は2025年4月と10月の二段階で対応が必要です。企業がやるべきことを以下にまとめましたので、早めの準備をお勧めします。

2025年4月1日

1育児介護休業規程の整備
子の看護休暇、介護休暇などの改正内容を反映させましょう。

2労使協定の再締結
子の看護休暇、介護休暇等について勤続6か月未満の労働者を適用除外としている場合は労使協定を再作成し締結し直しましょう。

3書面等の準備
介護に直面した労働者への周知・意向確認や40歳になった労働者への情報提供資料を準備しましょう。

2025年10月1日

1育児介護休業規程、その他規程の整備
始業・就業時刻や就業場所に関する定めを行う場合は適切に規程を整備しましょう。

2柔軟な働き方として講じる措置の検討及び労働者代表等の意見聴取
二つの措置を実施するだけでなく、労働者の過半数代表等からの意見聴取も必要です。

3労使協定の締結
一部の労働者を柔軟な働き方を実現するための措置の対象外とする場合は労使協定を締結する必要があります。

4就業条件に関する個別の意向聴取と配慮
就業条件に関する個別の意向の聴取の準備を行いましょう。

まとめ

日常業務をこなしつつ、新ルールへの対応は大変なことだと思いますが、対応漏れがないよう気をつける必要があります。キテラボからも皆さまのお役に立つような情報を発信していきますので、ぜひご活用ください。

キテラボ編集部より
規程管理システム KiteRa Bizは、育児・介護休業等に関する規程などを含めた約120規程雛形をご用意しております。雛形には条文の解説もついているため、参照しながら規程を編集することで、内容理解を深めた規程整備が簡単にできます。法改正に準拠した雛形のため、現在のお手持ちの規程と比較することで見直しポイントのチェックもできます。他にも、ワンクリックで新旧対照表が自動生成できる機能などもあります。

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(追記)規程管理システム KiteRa Bizは、2024年9月25日に、育児・介護休業法の改正に対応した規程と書式を追加・更新しました。
詳細は https://help.kitera-cloud.jp/biz/news/articles/6567/

参考文献

佐々木 光成
社会保険労務士
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