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退職手続きは何すべき?必要書類や流れ、ポイントを解説!

KiteLab 編集部
2024.02.28

所定期日までに多くの手続きが必要な退職手続き。会社側は、社会保険や所得税、退職金など、さまざまな対応が必要になります。

本記事では、退職手続きを「退職」「退職」「退職」の流れに分けて、会社の手続きを徹底解説するとともに、 注意したいポイントや退職従業員へのアドバイス項目を解説します。

退職手続きの基本的な流れ

はじめに、退職手続きの基本的な流れを説明します。ここで概要を把握し、全体像を捉えてください。

退職前に行う手続き

退職前に行う手続きは以下の通りです。

【1】給与システム、人事システムの退職データ登録
【2】退職金手続き(制度がある場合)

退職時に行う手続き

退職時に行う手続きは以下の通りです。

【1】住民税の手続き
【2】所得税の手続き
【3】人事発令
【4】健康保険証・社章等の返却(従業員→会社)
【5】社内各ツール・システムのID/メールアドレスの消除
【6】労働者名簿・賃金台帳・出勤簿の追記・削除等

退職後に行う手続き

退職後に行う手続きは以下の通りです。

【1】社会保険(健康保険・厚生年金)の資格喪失手続き
【2】雇用保険の資格喪失手続き

退職手続きに必要な書類等

ここでは、退職手続きに必要な書類を説明します。

従業員に提出してもらうべき書類等

退職手続きを行うには、まず従業員から書類を提出してもらうことが必要です。

一般的には、従業員から退職の意思表示として「退職願」を提出し、会社から内諾や承認を得て退職日が確定した段階で、「退職届」を提出します。

退職願は、就業規則に特段の定めがなければ、口頭でも差し支えありませんが、従業員からの退職の意思表示を証明するものとして、できる限り書面でもらい受けることをお勧めします。

退職届は、従業員から退職の通告をする書類です。無期労働契約の場合、法的には、退職の申し入れ日から2週間経過することによって雇用契約が終了(民法第627条1項)しますが、企業によって提出期限が異なる場合があります。そのため、自社の就業規則に定められた期限までに提出してもらいましょう。

その他の書類としては、「通勤交通費の精算」「財形貯蓄の解約・払い戻し」などがあります。

会社が交付すべき書類

源泉徴収票

源泉徴収票は、給与所得や社会保険料、所得税額を記載したもので、再就職先での年末調整や確定申告で必要になります。

原則、退職後1ヵ月以内に、退職者と税務署長にそれぞれ1通ずつ提出することが義務付け(所得税法 第216条)られていますが、実務上、給与支払報告書と同時に、翌年1月31日までに提出します。なお、退職後に賞与が支給される場合、その所得も含めて作成すべきことに留意してください。

離職票(依頼された場合)

離職票は、雇用保険上、退職する従業員が失業保険の給付を受けるときに必要な書類です。失業保険は、給付日数に限り(ハローワークインターネットサービス – 基本手当について)がありますので、依頼された場合は、速やかに従業員に提出してください。

なお、離職票の依頼を受けた場合は、退職の翌々日から 10 日以内に、離職証明書をハローワークに提出する必要があります(雇用保険被保険者離職証明書についての注意)ので、離職票の必要有無は退職前に必ず確認しましょう。

退職証明書(依頼された場合)

退職証明書は、退職した事実を証明する書類です。主に、退職する従業員における国民健康保険や国民年金の手続きのほか、再就職先企業から求められた場合に必要となります。依頼された場合は、遅滞なく発行する義務があります労働基準法第22条)ので、速やかに対応してください。

次章から、退職前と退職時、退職後の3つに大別して、分けて詳細に説明していきます。

退職前に行う手続き【社内手続き】

退職手続きは、退職前の段階でも事前に行う手続きがあります。ここでは、退職前の手続きを説明します。

【1】給与システム、人事システムの退職データ登録

人事システムや給与システムを導入している場合、退職前に退職登録をする必要があります。

給与システムでは、退職日を登録するほか、退職月の給与計算で「日割り計算の設定」「住民税の一括徴収」などが必要なケースもあるでしょう。人事システムでは、退職発令の登録や履歴情報の修正などが考えられます。

導入しているシステムによっては、タイミングや対応すべき事項が異なることがありますので、システムの仕様や自社の運用に合わせて対応しましょう。

【2】退職金手続き(制度がある場合)

退職金制度を導入している場合は、退職金の計算が必要になります。

一般的にいわれる「退職金」とは、退職一時金制度を指すことが多く、企業が積み立てた退職金を所定の計算方法・支給時期に合わせて支給する仕組みです。
制度を導入している場合、「退職金規程」といった退職金に関する規程に定められていますので、自社の規定に沿って対応してください。また、後述する住民税を一括徴収で給与で金額が足りないときは、退職金から徴収する必要があることに留意しましょう。
なお、退職金計算時期については、自社の退職金規程等の支給期に応じて対応してください。

退職時に行う手続き【税金手続き・他】

退職時には、住民税や所得税、社会保険の手続きのほか、社内手続きを行う必要があります。ここでは、退職時の手続きを説明します。

【1】住民税の手続き

給与から住民税を天引きする「特別徴収」を行っている場合は、退職する従業員の住民税徴収方法の変更が必要になります。従業員が住民登録している市町村に「給与支払報告に係る給与所得異動届書」を退職月の翌月10日までに提出します。この手続きが漏れてしまうと、自社の特別徴収義務が継続されたままとなりますので、必ず対応してください。

なお、住民税は、前年所得分を6月から翌年5月まで、12か月に分割して納付しますが、退職時の支払い方法は、退職月に応じて次のとおりとなります。

・6月から12月までに退職をする場合

従業員から一括徴収の申し出があったときは、給与や退職金で徴収し、住民税を納付します。

従業員が退職後に自身で納付する「普通徴収」を選択した場合は、会社が切り替え手続きを行い、従業員は市町村から送付された納付書によって未納分を支払います。

従業員が再就職し、特別徴収の継続を希望する場合は、「給与支払報告に係る給与所得異動届書」に再就職先の社名を記載し、市町村に届け出ます。従業員が転職先を明かさない場合は、再就職先にて記載し、市区町村に届け出でてもらうことも可能です。

・1月から4月までに退職をする場合

この場合は、5月までの未納分を会社が一括徴収する必要があります。

退職月の給与や退職金から天引きして一括徴収を行うよう手続きしてください。未納分が給与支給額を上回る場合は、退職金で徴収する必要があります。退職金でも賄えない場合は、普通徴収で対応することもあります。

・5月に退職をする場合

5月に退職する場合は、住民税徴収の最終月のため、それまでと同様、1か月分の特別徴収を行います。

参考までに、東京都における特別徴収の事務手引きをリンクいたしますので、ご確認ください。

(※参考)東京都・都内区市町村:「(区市町村民税・都民税) – 特別徴収の事務手引き

【2】所得税の手続き

所得税の手続きは、「会社が交付すべき書類」の章で解説した「源泉徴収票」を従業員に交付することで完了します。

【3】人事発令手続き

人事発令を行っている企業の場合、退職発令が必要になるでしょう。

退職発令は、「退職前」「退職後」など企業によって異なりますので、自社の運用に合わせて対応してください。従業員の誰もが閲覧できるように、掲示板やイントラネットに掲示します。人事システムを導入している場合は、人事システム上で退職の発令登録を行い、発令文書をダウンロードする等の運用か一般的でしょう。

【4】健康保険証・社章等の返却(従業員→会社)

健康保険証や備品は、退職日以降に返還してもらいます。

健康保険証は、退職当日まで有効ですので、退職日の翌日以降に郵送等で返却してもらうことが一般的です。自社の定めや運用に合わせて対応してください。

社章は、自社の従業員であることを示すものですので、不正利用が発生しないように必ず回収してください。

その他の備品は、退職当日までに返還してもらいましょう。

【5】社内各ツール・システムアカウント/メールアドレスの消除

従業員が退職する際は、各ツール・システムアカウントやメールアドレスの削除を行います。これを怠ると、情報漏洩につながるリスクがありますので、漏れのないように徹底してください。特に、クラウドツールを導入している場合、退職後にインターネットを介してログインされることのないように、確実に対処しましょう。

【6】労働者名簿・賃金台帳・出勤簿の修正

法定三帳簿」といわれる労働者名簿、賃金台帳、出勤簿のそれぞれについて、退職する従業員の情報について退職後以降の登録を削除します。

Excelや紙で勤怠・給与を管理している場合は、それぞれの台帳の不要な情報を削除します。

勤怠システムや給与システムを導入している場合は、それぞれに応じたマスタの退職登録を行います。

なお、法定三帳簿には保存義務があり、原則5年間(当面は3年間)の保存が必要であることに留意してください。法定三帳簿について詳しく知りたい方は、「法定三帳簿とはー労働者名簿、賃金台帳、勤怠記録について解説ー」の記事を参考にしてください。

退職後に行う手続き【各種保険手続き】

従業員の退職後は、社会保険や雇用保険の資格喪失手続きが必要になります。ここでは、各々の資格喪失手続きについて説明します。

【1】社会保険(健康保険・厚生年金)の資格喪失手続き

健康保険、厚生年金加入者が退職する場合は、退職日から5日以内に、管轄する年金事務所へ「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を提出します。合わせて、回収した健康保険被保険者証(本人分・扶養家族分)も必要になりますので、忘れずに提出してください。

紛失等により健康保険被保険者証が回収できない場合は、「健康保険被保険者証回収不能届」の添付が必要になることに留意が必要です。

(※参考)日本年金機構:「従業員が退職、死亡したとき

なお、健康保険組合加入企業の場合は、健康保険組合と年金事務所の双方に手続きが必要となりますが、詳しくは各健康保険組合にご確認ください。

【2】雇用保険の資格喪失手続き

雇用保険被保険者の従業員が退職する場合は、退職した翌々日から10日以内に、管轄するハローワークへ「雇用保険被保険者資格喪失届」に「離職証明書」を添付して提出する必要があります。

離職証明書は、失業保険の給付等の決定に必要であり、事業主と離職者間で主張が異なる場合は、ハローワークにて事実関係を調査のうえで、離職理由が判定されます。

雇用保険の様式や手続き内容を詳しく知りたい方は、厚生労働省のサイト「事業主の行う雇用保険の手続き」をご確認ください。

退職手続きで注意したいポイント・退職従業員へのアドバイス項目

退職手続きは、退職後の就労状況等によって、行政等の手続きが異なる場合があります。

ここでは、退職手続きで注意したいポイント・退職従業員へのアドバイス項目を解説します。

退職従業員が転職する場合

退職する従業員が転職する場合、退職後、就労までに1日でも空白期間がある場合は、原則、国民健康保険と国民年金の手続きが必要になります。手続きが遅れてしまうと、年金未納や健康保険が適用されないなどのリスクが生じますので、早めに加入手続きをするようにアドバイスしましょう。

なお、健康保険については、国民健康保険以外でも、退職後2年間加入できる「健康保険の任意継続制度」や保険料負担がない「家族の扶養に入る」といった選択肢もあります。ただし、家族の扶養に入るためには、収入要件を満たす必要があるため、加入できないケースもありますので、状況にあったアドバイスを心がけてください。

退職従業員が定年退職する場合

退職する従業員が定年退職する場合、健康保険の選択肢は次の4つがあります。

  • 健康保険の任意継続制度
  • 家族の扶養に入る
  • 国民健康保険への加入
  • 特例退職被保険者制度の利用

「健康保険の任意継続制度」は、離職前の健康保険に加入できる制度で、自己負担で保険料を支払うことで継続加入が可能です。家族を扶養に入れられるメリットはありますが、2年間しか加入できません。協会けんぽや健康保険組合で、所定の条件を満たしていれば加入できます。

「特例退職被保険者制度」は、自己負担で保険料を支払うことで、後期高齢者医療制度の対象となる75歳になるまで離職前の健康保険に加入できる制度です。厚生労働大臣の許可を受けた「特定健康保険組合」でしか利用できませんが、家族を扶養に入れることができます。

一方、国民健康保険は、特定の加入条件はないものの、被扶養者の仕組みがなく、家族もそれぞれ加入し保険料が発生するほか、他の制度と比較して給付内容が薄い等のデメリットがあります。

「特例退職被保険者制度」が利用できる企業では、この制度をおすすめすることが望ましいと考えられますが、アドバイスをする際は、協会けんぽや加入している健康保険組合、社会保険労務士等に相談するなど、適宜対応しましょう。

まとめ

本記事では、退職手続きを「退職前」「退職時」「退職後」の流れに分けて、会社の手続きを徹底解説するとともに、 注意したいポイントや退職従業員へのアドバイス項目を解説しました。

退職手続きは、退職する従業員の状況によって手続きが異なるケースがあるほか、行政手続きには、それぞれリミットが設けられていますので、漏れなく正確に対応することが求められます。

本記事を参考に、退職手続きを確実にこなすとともに、人事として適切なアドバイスをできるようにしてください。

この記事を書いた人

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