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法定三帳簿とはー労働者名簿、賃金台帳、勤怠記録について解説ー

KiteLab 編集部
2023.04.04

法定三帳簿

事業活動を行ううえで、帳簿の作成は欠かせません。事業における日々の取引や資金の流れの記録など、帳簿の作成目的は様々です。

帳簿は、給与計算や勤怠管理といった労務管理を目的としても作成されます。当記事では、労務管理において重要な役割を持つ、法定三帳簿について解説を行っています。

法定三帳簿は、労働保険や社会保険の手続きを行う際に添付を求められることもある大切な帳簿です。是非当記事を参考にして、しっかりと作成してください。

法定三帳簿の概要

労働者の雇い入れを行った場合には、労働基準法に基づき、一定事項を記載した帳簿を作成することが必要です。作成が義務付けられている法定帳簿には、「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」の3種類が存在します。

この3種類の法定帳簿は、法定三帳簿と呼ばれ、作成義務と一定期間の保存義務が課せられています。また、法定三帳簿は、本店や本社のみでなく、各事業場において作成と保存が必要です。

事業場とは

法定三帳簿は、事業場ごとに作成と保存を行うことが必要です。事業場とは、労働安全衛生法が適用される単位であり、「同じ場所で相関連する組織のもとに継続的な作業をする場所」を指すとされます。具体的な例としては、次のような場所が挙げられます。

  1. 本店・本社
  2. 支店・支社
  3. 事務所
  4. 工場
  5. 店舗

原則として、同じ場所に存在すれば、1つの事業場とみなされます。しかし、工場内の医務室や食堂のように、労働の状態や業態が著しく異なる場合には、各々が別個の事業場とみなされることに注意が必要です。

また、離れた場所にあれば、原則として別個の事業場とみなされます。しかし、規模が小さく、独立した組織と見ることが困難な場合には、直近上位の組織と一括して1つの事業場として取り扱われます。

例として、営業所員が1名常駐するのみの営業所などが挙げられるでしょう。このような営業所は、独立性を有しておらず、直近上位組織である本社と一括して1つの事業場であるとみなされることになります。

労働者名簿

労働者名簿は、労働基準法第107条により、作成が義務付けられている帳簿です。事業場ごとに作成し、その記載内容に変更があった場合には、遅滞なく訂正しなければなりません。

労働者名簿は、労働基準法によって、その記載内容が定められています。労働者名簿に記載すべき内容は、次の通りです。

  1. 氏名
  2. 生年月日
  3. 履歴
  4. 性別
  5. 住所
  6. 従事する業務の種類
  7. 雇い入れの年月日
  8. 退職の年月日及びその事由(解雇の場合にあってはその理由含む)
  9. 死亡の年月日及びその原因

なお、常時30人未満の労働者を使用する事業場では、労働者名簿に従事する業務の種類を記載する必要はありません。

任意記載事項

法で定められた法定記載事項の他に、会社が任意の事項を記載することも可能です。任意記載事項は、連絡先となる電話番号や、社会保険に関する事項などを記載することが多くなっています。

電話番号などは、労働者の個人情報であり、記載に当たっては、同意を得ておくことで必要です。また、マイナンバーは、社会保険や税法上の手続きなど、必要される場合においてのみ目的を示して、収集ができます。

しかし、労働者名簿は、社会保険や税法上の手続き以外の目的で閲覧する可能性もあります。そのため、任意記載事項として、マイナンバーを記載することは避けなくてはなりません。

労働者名簿の対象となる労働者

労働者名簿は、原則として、正社員や契約社員、パート、アルバイトといった雇用形態や名称を問わず、全ての労働者について作成することが必要です。しかし、日々雇い入れられる者については、労働者名簿の作成が不要となっています。

社員名簿や従業員名簿との違い

労働者名簿の他に、社員名簿や従業員名簿といった名称の帳簿を見かけることがあります。これらは、労働者名簿とは、異なった帳簿なのでしょうか。

結論からいえば、労働者名簿と社員名簿や従業員名簿に内容の違いはありません。名称が異なっているだけで、全て同じ内容の法定帳簿を指しています。

社員台帳といった名称もありますが、こちらも同様です。そのため、法定の記載事項に漏れがなければ、いずれの名称を用いても問題ないことになります。

賃金台帳

賃金台帳は、労働基準法第108条により、作成が義務付けられている帳簿で、事業場単位での作成が必要なことは、労働者名簿と同様です。賃金計算の基礎となる事項や、賃金の額などを賃金支払の都度遅滞なく記入します。

賃金台帳に記載すべき事項は、次の通りです。

  • 氏名
  • 性別
  • 賃金計算期間
  • 労働日数
  • 労働時間数
  • 時間外労働時間数
  • 休日労働時間数
  • 深夜労働時間数
  • 基本給、手当その他賃金の種類ごとにその額
  • 賃金控除した場合にはその項目と控除額

労働時間や時間外労働時間、休日労働時間など、賃金計算に当たって必要となる事項の記載が必要となります。しかし、始業・終業の時刻や、休憩時間まで記載する必要はありません。

賃金台帳の作成対象と記載事項の例外

賃金台帳は、正社員や契約社員、パート、アルバイトといった雇用形態を問わず、作成することが必要です。また、労働者名簿と異なり、日々雇い入れられる者についても、賃金台帳の作成が必要となります。ただし、日々雇い入れられる者については、賃金台帳に、賃金計算期間を記載する必要がありません。

給与明細との違い

賃金の支払いといえば、給与明細を思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、給与明細は、法で定められた賃金台帳の記載事項を網羅していない場合が多く、両者の兼用は通常できません。両者ともに賃金に関して作成されており、記載事項に重複する部分もありますが、混同しないようにしましょう。

出勤簿

出勤簿は、労働者名簿や賃金台帳と並び、法定三帳簿の1つとして挙げられています。事業場単位での作成が必要な点も、労働者名簿や賃金台帳と同様です。しかし、労働者名簿や賃金台帳と異なり、労働基準法に、出勤簿の作成を義務付ける直接の規定はありません。

では、出勤簿の作成が義務付けられていないのかといえば、そうではありません。直接の規定こそありませんが、出勤簿も労働基準法第109条に定められる「賃金その他労働関係に関する重要な書類」として保存が義務付けられています。

出勤簿に記載すべき事項は法律の規定はありませんが、次の事項を記載するとよいでしょう。

  • 出勤日及び労働日数
  • 始業・終業の時刻及び休憩時間
  • 日別の労働時間数
  • 時間外労働を行った日付、時刻、時間数
  • 休日労働を行った日付、時刻、時間数

出勤日数や労働時間数を記載するだけでは、それが通常の労働時間か時間外、休日、深夜のいずれに該当するか把握することは困難です。そのため、出勤簿には、労働時間の種類ごとの日付や時間数などを具体的に記載することによって、労働時間の正確な把握を行っています。

作成様式

出勤簿の作成様式に、法の定めはありません。そのためExcelやWordなどで作成しても良く、自己申告による手書きでの作成も可能です。

ただし、自己申告による労働時間の把握は、ミスや改ざんの恐れがあり、常に認められるわけではありません。自己申告による労働時間の把握は、タイムカードやパソコンの使用時間など客観的な方法による確認が困難な場合に限られます。

また、自己申告による場合には、自己申告された労働時間と、客観的な方法によって把握した在社時間に著しい乖離がないか調査することが必要です。その他にも、労働者に対して、自己申告制度について十分な説明を行うことなどが必要となります。

自己申告による労働時間の把握は、あくまでも客観的な方法による労働時間の把握が困難な場合の例外的な方法です。労働時間の改ざんなどを防ぎ、正確な労働時間を把握するためにも、客観的な方法による労働時間の把握に努めてください。

タイムカードとの関係

出勤簿もタイムカードも出勤や退勤を記録する点で変わりはありません。だからといって、タイムカードを出勤簿として利用可能かといえば、利用できない場合が多くなっています。

出勤簿は、労働者の労働時間の正確な把握に使用される帳簿です。確かにタイムカードは、打刻することで、出退勤時刻を記録しますが、その記録が正確とは限りません。代理打刻など、不正な打刻が行われている場合も考えられます。

そのため、タイムカードを出勤簿として利用するには、作業日報や残業申請書といった補足資料と照合し、正確な労働時間の記録であることを証明する必要があります。

法定三帳簿の保存期間と罰則

法定三帳簿には、作成だけでなく保存の義務もあり、保存期間も定められています。法定三帳簿は、労働基準法第109条の「賃金その他労働関係に関する重要な書類」として、5年間(当分の間は3年間)の保存が必要です。

保存における帳簿ごとの起算日は、次の通りです。また、記入や完結等した日より当該記録に係る賃金の支払期日が遅い場合は、その支払期日が起算日となります。

  • 労働者名簿
    労働者の死亡、退職又は解雇の日
  • 賃金台帳
    最後の記入をした日(労働者の最後の賃金について記入した日)
  • 出勤簿
    その処理が完結した日(労働者が最後に出勤をした日)

また、法定三帳簿の作成義務や保存義務に違反した場合には、労働基準法第120条による罰則も予定されています。罰則の内容は、30万円以下の罰金となっており、罰則を受けないように、しっかりと作成保存することが必要です。

まとめ

労務管理を適正に行うためには、労働時間や賃金支払いに関する正確な記録が不可欠です。当記事では、正確な労働時間の把握や賃金支払いに欠かせない法定三帳簿について解説を行ってきました。

法定三帳簿の作成や保存義務に違反した場合には、罰則も予定されているため、当記事を参考に正確な知識を身につけてください。

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