従業員のうつ病は労災認定される?
この記事でわかること
- 従業員のうつ病が労災認定される際の要件と、心理的負荷評価の判断ポイント
- 労災申請発生時に企業が行うべき初動対応と、専門家活用の要所
- 長時間労働の是正やハラスメント防止など、企業が取り組むべき労災予防策
社労士の西岡 秀泰先生です。
今回は、うつ病は労災認定に関する実務上のご質問にお答えします。
Q 従業員のうつ病は労災認定される?
A 要件を満たせば、従業員のうつ病は労災認定されます。
職場での事故やケガだけでなく、うつ病などの精神障害も要件を満たせば労災認定されます。精神障害などの労災認定要件は次の3つです。
| 【1】認定基準の対象となる精神障害を発病していること 【2】認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6ヶ⽉の間に、 業務による強い⼼理的負荷が認められること 【3】業務以外の⼼理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと |
1つ目の要件の「認定基準の対象となる精神障害」とは、国際疾病分類第10版(ICD-10)に定められた精神障害で、うつ病や統合失調症などが該当します。

2つ目の要件については、厚生労働省の「業務による⼼理的負荷評価表」に基づいて労働基準監督署が認定します。発病前おおむね6ヶ⽉の間に発生した出来事が評価表により「強」と評価された場合、「業務による強い⼼理的負荷」があったと認定されます。
評価方法は次の通りです。
- 評価表にて「特別な出来事」があった場合、⼼理的負荷の総合評価は「強」と評価
- 特別な出来事には該当しないが発症に大きな影響がある出来事があった場合、総合評価によって⼼理的負荷の強度を「強・中・弱」と評価
特別な出来事には、「業務上で生死にかかわるような病気やケガをした」「極度の長時間労働(月160時間を超える時間外労働など)を行った」などの出来事が該当します。
なお、2023年9月に精神障害の労災認定基準が改正され、総合評価の対象となる出来事に以下が追加されています。
| ・顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた ・感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した |
従業員から労災申請を受けるなど労災の可能性が判明した場合、早急に従業員本人を含め関係者から事情を聞き事実確認を行うことが必要です。必要に応じて、産業医や社会保険労務士などの専門家にも相談して、適切に対応しましょう。
精神障害を発症した従業員の治療や職場復帰、プライバシー保護などを万全に行うとともに、労働基準監督署に労災手続きを行います。労災申請を妨害すると、刑事罰を受けるとともに社会的信用を失うという大きなリスクがあることを認識しておきましょう。
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精神障害の労災認定に関するトラブルを防ぎ、従業員の安全配慮義務を適切に果たすためには、就業規則や社内規程の整備が欠かせません。長時間労働の管理、ハラスメント防止、健康管理体制の明確化など、労災予防につながるルールを最新の法令に沿って整備しておくことが重要です。
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