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雇用保険マルチジョブホルダー制度とは?

KiteLab 編集部
2024.01.24

制度説明

マルチジョブホルダー制度は、令和4年1月1日に導入された制度で、複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者が、そのうち2つの事業所での勤務を合計して一定の要件を満たす場合に適用される制度です。本人からハローワークに申出を行うことで、申出を行った日から特例的に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)になることができます。

マルチジョブホルダー制度が適用されるためには、労働者は以下の要件をすべて満たすことが必要です。

①複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること
②2つの事業所(1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上であること
③2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること

(例)

A社(週15時間)、B社(週8時間)、C社(週12時間)のいずれの事業所でも1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満である場合

パターン①A社とB社
パターン②B社とC社
パターン③A社とC社

いずれの組み合わせでも届け出ることが可能となります。

例のように、3つ以上の事業所に雇用される場合でも、合算できるのは2つの事業所の労働時間のみで、3つ以上の中から2つを選択して加入手続きをすることになります。
なお、同制度を令和4年1月1日から試行実施し、その効果等を施行後5年を目途に検証することとしています。

グラフ, 棒グラフ

自動的に生成された説明
総務省「2022年労働力調査」より引用)

「労働力調査」によると、2021年の高齢者の就業者数は、2004年以降、18年連続で前年に比べ増加し、909万人と過去最多となっています。

しかし、高齢者の就労形態は、正規雇用よりも非正規雇用が多い傾向にあります。非正規雇用では、雇用保険の適用を受けられない場合が多く、失業などのリスクに備えることができず、生活が不安定になる可能性があります。

マルチジョブホルダー制度を利用すると、複数の事業所で勤務する高齢者が、雇用保険の適用を受けられるようになり、失業などのリスクに備えることができます。また、社会全体で考えても、高齢者の就労機会を拡大し、生涯現役社会の実現を図るための重要な制度ともいえます。

この制度が周知され、企業と労働者が積極的に活用することで、高齢者の生活の安定と社会の活性化につながることが期待できます。

マルチジョブホルダー制度のメリット

マルチジョブホルダー制度のメリットとして、下記があげられます。

労働者側のメリット

① マルチ高年齢被保険者が失業した場合、離職日以前の1年間に被保険者期間が通算して6ヵ月以上あることなどの条件を満たせば、高年齢求職者給付金(被保険者期間に応じて基本手当日額の30日分または50日分)が支給されます。

待機期間や給付制限は高年齢被保険者と同じです。また、条件を満たせば2つの事業所のうち1つの事業所のみを離職した場合でも受給できます。給付金は原則、離職日以前の6ヵ月間に支払われた賃金の合計を、180で割って算出した金額の約5~8割が支給され、短時間勤務で働くシニアの方々にとってはメリットになります。

② 要件を満たせば、育児休業給付・介護休業給付・教育訓練給付などの給付を受けることができます。育児休業給付の活用頻度は低いかもしれませんが、配偶者など家族の介護が必要な人やスキルアップ・学び直しをしたいシニアの方々にとってはメリットになります。

会社側のメリット

① 本来行っている雇用保険の手続きが、マルチジョブホルダー制度については「労働者側」で実施するため、会社側は必要事項の記載や証明等を行うだけで済み、手続きは最小限にとどまります。

※ただし、労働者側に制度説明や周知を行う必要があります。

② マルチジョブホルダー制度があることで、短時間シニア労働者が安心して働ける環境が生まれ、シニア労働者の定着につながり、人材確保がしやすくなります。

会社が準備すべきことは何か

マルチジョブホルダー制度について、対象労働者を抱える企業が準備、実施する事項は以下の通りです。

制度の概要を理解し、対象労働者に周知する

前述の通り、マルチジョブホルダー制度への加入は労働者が手続します。会社側は対象労働者に制度説明や手続き方法の説明を積極的に実施することが望まれます。

厚生労働省から案内文書として「雇用保険マルチジョブホルダー制度申請パンフレット」があり、説明の際の手助けになります。

<雇用保険マルチジョブホルダー雇入・資格取得届(マルチ雇入届)記入例>
厚生労働省「雇用保険マルチジョブホルダー制度申請パンフレット」より抜粋)

雇用保険マルチジョブホルダー雇入・資格取得届(マルチ雇入届)を記入し、確認資料と共に労働者に渡す

確認資料

確認資料とは以下の通りです。

  • 賃金台帳
  • 出勤簿(記載年月日の直近1ヵ月分)
  • 労働者名簿
  • 雇用契約書
  • 労働条件通知書
  • 雇入通知書 など

手続きの流れ

手続きの流れは下図の通りです。

ダイアグラム が含まれている画像

自動的に生成された説明
厚生労働省「雇用保険マルチジョブホルダー制度」リーフレット より引用)

手続きにおける注意点

手続きにおける注意点を下記にあげます。

  • 企業側は労働者から依頼があった場合、雇用の事実や所定労働時間などの手続きに必要な証明を行わなければなりません。※労働者から証明を求められた場合はすみやかに対応しなければならず、申請を行ったことを理由に不利益な取り扱いを行うことは禁じられています。
  • 雇用保険の適用事業者は、労働者からマルチジョブホルダー制度の利用手続きを求められた場合、これを拒否することはできません。
  • マルチジョブホルダー制度を利用した場合、労働者が申請を行ったその日から雇用保険料の納付義務が発生します。
  • マルチジョブホルダー制度にかかる手続きは、現状電子申請は利用できません。
  • マルチ高年齢被保険者が離職した場合のみならず、もう一方の事業所における変更事項(週所定労働時間が5時間未満になった又は20時間以上になった、2つの事業所の週所定労働時間の合計が20時間になった)もあわせて把握する必要があります。

<雇用保険マルチジョブホルダー喪失・資格喪失届 記入例>

テーブル が含まれている画像

自動的に生成された説明
厚生労働省「雇用保険マルチジョブホルダー制度申請パンフレット」より抜粋)

まとめ

65歳以上で2つ以上の事業所で働いている場合、一定の条件を満たせば雇用保険に加入できる「雇用保険マルチジョブホルダー制度」。一見すると労働者側にのみメリットがあると思われがちですが、高齢化社会を迎え、ますます人材確保が困難になる中で、対象労働者に制度を積極的に周知し、活用を促すことで、対象労働者に安心感が生まれ人材定着につながることを期待できます。

「雇用保険マルチジョブホルダー制度」の積極的な活用をおすすめいたします。

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