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労働基準法における休憩時間与え方の注意点とポイント

KiteLab 編集部
2023.04.13

労働基準法(以下「労基法」という。)上、1日の労働時間が6時間を超える場合には45分以上、1日の労働時間が8時間を超える場合には1時間以上の休憩を与えなければならないとされています。一定の時間働くと労働者の集中力が途切れてしまうため、適宜休憩を与えることによって心身の回復をはかることが必要です。ただし、休憩時間の与え方のルールは労基準法で定められているため、そのルールに従って与える必要があります。今回は、休憩時間の与え方の注意点とポイントについてご紹介します。

1 休憩時間とは

1.1 休憩時間の定義

休憩時間とは労働者が権利として労働から離れることを保証されている時間のことをいいます。そのため、単に作業に従事しない「手待ち時間」は休憩時間と認められません。

例えば、お昼の「休憩時間」に電話当番をさせるといったことがこれにあたります。このように作業は中断しているものの、必要があればすぐに対応できる状態は休憩時間とみなされないため注意が必要です。

1.2 休憩時間の長さ

前述のとおり、1日の労働時間が6時間を超える場合には45分以上、1日の労働時間が8時間を超える場合には1時間以上の休憩を与えなければならないとされています。そのため次のように拘束時間が8時間45分、休憩時間が45分で、所定労働時間がちょうど8時間の場合には、45分の休憩時間を付与すれば労基法に抵触しません。

所定の始業時刻:9時00分 所定の終業時刻:17時45分 休憩時間45分

所定労働時間が8時間ちょうどの場合は、45分間の休憩を与えれば、労基法に抵触しません。ただし、次のような場合は労基法に抵触します。

所定の始業時刻:9時00分 所定の終業時刻:17時45分 休憩時間:45分 時間外労働:30分

時間
9:00〜12:0012:00〜12:4512:45〜17:4517:45〜18:15 時間外労働

労基法第34条における労働時間とは、実労働時間を意味しています*。上記の場合、所定の終業時刻である17:45を超えて働くと、実労働時間が8時間を超えるため、1時間以上の休憩を与える必要があります。

そのため、12時00分から12時45分とは別に、少なくとも15分の休憩時間を追加で与えなければなりません。なお、労基法上、休憩時間をまとめて与えることまでは求められていないため、休憩時間を分割して与えることは可能です。
*行政通達:昭和22年11月17日基発401号 昭和26年10月23日 基収5058号)

2 休憩時間の与え方のルール

休憩時間の与え方のルールとして、休憩時間は①労働時間の途中に、②一斉に、③自由に与える必要があります。これらのルールを守って休憩時間を与えないと労基法違反となるため休憩時間の与え方の運用についても適宜見直しが必要となります。ここでは、上記3点のルールについて解説します。

2.1 労働時間の途中に

休憩時間は労働時間の途中に与える必要があります。労働時間を与える趣旨は、一定の時間働くことによって蓄積された疲労を回復することにあるためです。そのため、始業後すぐに休憩時間を与えたり、休憩時間が終了するとともに退勤をするような場合、休憩時間を適切に与えたことにはなりません。

2.2 一斉に

休憩時間は原則として一斉に与える必要があります。そのため、一定の時刻になれば皆一緒に休憩を開始させなければなりません。なお、飲食店等の一部の事業*においては、一斉付与の例外が認められているため、Aさんは12時00分から1時間の休憩を開始、Bさんは13時00分から休憩を開始といった運用が可能です。

飲食店等以外の事業においても労使協定*を締結すれば、休憩時間の一斉付与の原則を除外できます。他の従業員が休憩の間に電話当番を行わせて、その後に休憩時間を与える等、個別に休憩を与える時間を設定する必要があるでしょう。そのような場合は労使協定を締結することで対策を講じることができます。なお、一斉休憩の適用除外に関する労使協定は、行政官庁に届け出る必要はありません。

*労基則第31条により、①運送業、②販売・理容業、③金融・保険・広告業、④映画・演劇業、⑤郵便・信書便・電気通信業。⑥保険衛生業、⑦旅館・飲食店・接客業、⑧官公署の事業において、一斉付与の例外として認められています。

*労使協定・・・その事業場で労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合、過半数で組織する労働組合がない場合には事業場の労働者の過半数を代表する者との書面による協定をいいます。

2.3 自由に

休憩時間は原則として、労働者の自由に利用させる必要があります。休憩時間とは、単に作業に従事しない手待ち時間を含まず、労働者が権利として労働から離れることを保証されている時間をいいます*。

休憩時間中に作業を指示したり、電話当番等をさせていれば、労働者に休憩時間を自由に利用させているとはいえず、休憩時間を適切に与えたことにはなりません。なお、会社内の規律を保持するため必要な制限を加えることは、休憩の目的を損なわない限り差し支えありません。

*1例えば、休憩時間中に同僚に対して営業活動を行ったり、会社内で賭博行為を行うことを制限することが挙げられます。

また、休憩時間中の外出の許可制について、所属長の許可を受けさせることは、事業場内において自由に休息できる場合には必ずしも違反になることはありません。
*1(行政通達:昭和22年9月13日基発17号)
*2(行政通達:昭和23年10月30日 基発1575号)

参考
労基法施行規則第33条により、労基法第34条第3項の規定(労働時間の自由利用)ついて、次に該当する者は適応されません。
1 警察官、消防吏員、常勤の消防団員、准救急隊員及び児童自立支援施設に勤務する職員で児童と起居をともにする者
2 乳児院、児童養護施設及び障害児入所施設に勤務する職員で児童と起居をともにする者
3 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第六条の三第十一項に規定する居宅訪問型保育事業に使用される労働者のうち、家庭的保育者(同条第九項第一号に規定する家庭的保育者をいう。以下この号において同じ。)として保育を行う者(同一の居宅において、一の児童に対して複数の家庭的保育者が同時に保育を行う場合を除く。)
  なお、乳児院、児童養護施設及び障害児入所施設に勤務する職員で児童と起居をともにする者を使用する使用者は、その員数、収容する児童数及び勤務の態様についてあらかじめ労働基準監督署長の許可を受けなければなりません。

3 罰則

休憩時間のルールを規定している労基法第34条に違反して休憩を与えなかった場合や、休憩を与えたとしても①労働時間の途中に、②一斉に、③自由に利用させていない場合は、使用者は6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられます。

今回は労基法上の休憩時間の定義と休憩時間の与え方について解説をしました。休憩時間を適切に与えることで、労働者の疲労の蓄積をリフレッシュすることができ、作業能率の低下を防ぐことが期待できます。労基法のルールにのっとり適切に休憩を与えましょう。

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