TOP労務ガイド労働組合対応の基本と不当労働行為をしないために知っておくべきこと | 労務担当者1年目必読

労働組合対応の基本と不当労働行為をしないために知っておくべきこと | 労務担当者1年目必読

KiteLab 編集部
2023.08.24

労務担当者として1年目の方は、労働組合とのやり取りや不当労働行為の防止など、多岐にわたる問題に直面することがあります。労働組合との対応が必要な場合、適切な対応をしないと、会社の信頼を損ねることや、従業員とのトラブルを引き起こすことがあります。

また、不当労働行為を行ってしまうと、法的な問題や企業イメージの低下など、深刻な影響を引き起こす可能性があります。

そこで、今回は、労働組合との対応について、基本的な考え方や適切な手続きについて解説します。また、不当労働行為の種類や防止策についても詳しく説明します。これらの知識を身につけることで、労働組合との円滑な対応や不当労働行為の防止につながることができます。

労働組合の対応は社内労組と合同労組(ユニオン)で大きく変わることを認識しよ

 「労働組合」という言葉は広い意味で使われますが、実際には「社内労組」と「合同労組」で対応の仕方が大きく異なります。その理由は、労働組合を構成する人員の性質が異なるためです。ここでは、社内労組と合同労組の特徴と対応法についてそれぞれ解説します。

社内労組の特徴と対応法

社内労組の特徴は、自社の従業員で構成され、課長職以下の一般社員が参加していることです。そのため、会社にとって過度な要求や過激な行動には出ない傾向があります。社内労組は会社の内部事情を理解し、それに合わせて行動するため、会社側にとって脅威となることは少ないです。団体交渉なども穏やかに進行し、ある程度の妥結を見越して最初から交渉に来てくれます。

合同労組(ユニオン)の特徴と対応法

合同労組(ユニオン)は、様々な背景を持つ人々で構成される労働組合で、1人から加入できます。企業側はユニオンの構成員を把握できないことが一般的です。ユニオンは会社の違法行為を厳しく非難します。

団体交渉が不調に終わると、労働委員会や民事訴訟、労働基準監督署、警察署への告訴・告発が行われる可能性があります。つまり、社内労組とは異なり、労働問題を解決するまでは徹底抗戦をしてくる組織だと考えることが重要です。

また、街宣やビラ配りなどを行うことにより、会社の事業所所在地周辺に対して発生した労働紛争の実態を知らせます。社内労組と同じように対応していると、会社側は評判が悪くなることや、労働基準監督署や警察への告訴・告発内容などから行政処分を受けることになり、取引先を失うことにもなりかねません。初動対応を誤ると、一気に窮地に追い込まれることは間違いありません。

労働組合に対して絶対にやってはいけない不当労働行為            

労働組合に対しては、絶対にやってはいけない不当労働行為が存在します。不当労働行為とは、労働組合の正当な権利を阻害する言動のことであり、団体交渉拒否や不利益取り扱い、黄犬契約、支配介入、経費援助などが含まれます。

特に、労務担当者1年目は団体交渉などへの出席時にうっかりとんでもない発言をしてしまうことがありますが、このような発言が不当労働行為と認定されると、企業側が労働組合法違反で処分を受けることになるため、絶対にしてはいけません。ここでは、労働組合に対して絶対にやってはいけない不当労働行為について解説していきます。

団体交渉の申し入れを拒否すること            

労働組合からの団体交渉の申し入れを拒否することは、絶対に避けるべきです。なぜなら、この行為は不当労働行為と認定され、企業は処罰される可能性があるからです。不当労働行為が認定されると、企業は公共事業への入札停止や助成金受給対象からの排除、コンプライアンス違反などにより取引先を失い、経営者が逮捕され刑事罰を受ける可能性もあります。したがって、団体交渉には必ず応じるようにしましょう。

団体交渉の申し入れを無視すること    

団体交渉の申し入れは、FAXや郵便などで届くことがあります。しかし、絶対に無視してはいけません。無視すると、不当労働行為が成立してしまう可能性があります。労務担当者1年目の方は、どう対応すれば良いか分からず放置したくなるかもしれませんが、社長や人事部長などに必ず相談してください。団体交渉の日程などは、返事をすれば調整してくれることがほとんどです。無視するのではなく、回答期限内に必ず返事だけはするようにしてください。

労働組合員を特定しようとすること

 従業員の中に、ユニオンなどの合同労組に加入している人がいるかどうか分からないと、経営者は不安になることがあります。そのため、加入者を特定したいと思うことがありますが、この行為は不当労働行為に該当するため、労務担当者に確認するように依頼することは避けるように伝えてください。労働組合員を特定しようとする行為そのものが不当労働行為として糾弾される可能性があるためです。

労働組合員に脱退を勧めること            

労働組合員に対して労働組合から脱退するように勧めることは絶対にしないでください。労働者の憲法で保障された権利を侵害する行為だからです。労働者の権利を侵害することになり、不当労働行為だと糾弾されます。

労働組合に加入したことを理由に解雇など不利益な取り扱いをすること

労働組合に加入したことを理由として、解雇など不利益な取り扱いをすることは辞めましょう。なぜなら、労働組合へ加入する権利は、憲法上の権利であり、それを理由として不利益な取り扱いをすることは禁止されているためです。

たとえば、労働組合加入直後に解雇したり、人事異動を命じたりすると、不当労働行為と認定されるリスクがあります。

特定の労働組合だけを優遇すること

特定の労組にだけ優遇的な取り扱いをすることは避けましょう。すべての労働組合を平等に扱うことが求められています。たとえ社内に既に労組がある場合でも、社外の労組に加入した従業員にも同じように団体交渉に応じる必要があります。

企業にとっても、特定の労組にだけ優遇的な条件を提示することは不利益をもたらす可能性があります。他の労組が不利な条件で交渉をしている場合、特定の労組に優遇的な条件を提示すると、他の労組とのバランスが崩れ、不満や不平等感を生じさせることがあります。企業が不公平な待遇を行うと、従業員や労組から不満や抗議が起こり、企業と労働組合の関係が悪化することがあります。

これにより、企業のイメージや信頼性が低下し、経営に悪影響を及ぼすことになります。したがって、企業はすべての労働組合を平等に扱い、公正かつ適切な労働条件を提供することが求められます。これにより、労働組合や従業員との良好な関係を築き、企業の発展につなげることができます。

裁判中の係争案件案件であることを理由に団体交渉を拒否すること  

 裁判中の案件については、労働組合からの団体交渉を拒否することはできません。なぜなら、団体交渉と裁判は別のものであり、裁判中でも団体交渉で解決することができます。また、裁判が終わっても労働組合との団体交渉は継続することができます。企業側からすると裁判で同じ案件を争っているのだから問題ないだろうと思われる可能性がありますが、基本的には裁判と団体交渉は関係がないと考えた方が無難です。

使用者側の立場の社員が組合に加入すること

 使用者側の人間は原則として労働組合に加入できません。これは、労働組合は、労働者が加入するべき組織であり、使用者側が参加することができないためです。一般的には、課長職以上の従業員は労働組合に加入しません。また、人事部の社員の中でも主任以上の役職についている従業員は、労働組合から外れることがあります。これは、彼らが経営者に近い立場で働いているためです。

労働組合に加入しないことを条件に人材を採用すること

労働組合に加入しないことを条件に人材を採用することは、黄犬契約と呼ばれる不当な労働行為であり、違法です。このような条件が提示された場合、企業は労働組合を認めず、従業員に違法な圧力をかけているとみなされることがあります。

また、労働組合に参加することは、従業員の権利を守り、社会的にも重要な役割を果たすことができます。労働組合に参加することを妨げることは、従業員の権利を侵害し、企業の信頼性や社会的評価を低下させることにつながります。したがって、企業は不当労働行為を行わず、従業員が自己の意思で労働組合に参加することを尊重することが必要です。これにより、従業員との信頼関係を築き、企業の発展につなげることができます。

団体交渉を、議論を重ねないまま打ち切ること

 団体交渉を打ち切る前に、十分な議論を行うことが必要です。そうしない場合、不当労働行為になります。労働組合が要求することについては、真摯に回答することが必要です。全ての要求を受け入れる必要はありませんが、話を聞き、誠実に答えることが重要です。

企業が労働組合に対して経費援助すること            

 企業が労働組合に金銭的な援助をすることは、経費援助と呼ばれ、労働組合法で禁止されています。この禁止は、労働組合が経営者に対して強い意見を言えなくなることを防ぐためです。会社側が善意で援助をしても、経費援助によって救済申し立てをされると、不当労働行為と認定され処罰される可能性があります。

労働組合法を熟読して勉強することが大切            

 労働組合法をしっかりと熟読し、勉強することは、労務担当者1年目にとって非常に重要です。なぜなら、労働組合法を理解していなければ、労働組合との対応が困難になるからです。特に労務担当者は、経営者側の立場にあるため、違法行為を行うと会社全体がペナルティの対象となる可能性があります。どこまで踏み込んでよいのか、絶対にやってはいけないことは何かを理解しておくことが大切です。

労働組合対応の学び方            

労働組合対応の方法を労務担当者が学ぶ方法として、団体交渉への出席や、労働組合からの要求の実現、経営者側の考え方を学ぶといった方法があります。それぞれについて解説します。

社内労組との団体交渉への出席            

労務担当者1年目の方は、社内労組との団体交渉に積極的に参加しましょう。社内労組は、会社内の顔見知りが出席しているため、比較的話が進みやすいです。団体交渉の雰囲気を知り、交渉の段取りをしっかりと見ておくことが大切です。

労働組合からの要求を実現できるかどうかを考える

労働組合からの要求を実現する方法について、自分なりに考えてみましょう。なぜなら、将来的には労務担当者が労組の要求を実現する役割を担うことになるからです。初めのうちはアイデアが浮かばないかもしれませんが、会社全体が良くなるような提案をするために、現場の不満を積極的に聞いておくことが大切です。

経営者側の考え方を学ぶ            

初めて労務担当者として働く場合、経営者側の考え方を学ぶことが大切です。たとえ優れた人事制度のアイデアを思いついたとしても、経営者側の意向を理解していなければ実現することは難しいでしょう。労働者と経営者の双方の考え方を理解し、会社にとって最も有益な提案をすることが重要です。

まとめ

今回は、労務担当者が1年目で学ぶべき労働組合の対応法について解説しました。

特に注目して欲しい点として、社内労組と合同労組(ユニオン)の性質の違いがあります。社内労組は従業員で構成されているのに対して、合同労組(ユニオン)は、特定の加入者以外は、社外の人間で構成されています。社内労組対応で経験を積み、いずれは外部労組(ユニオン)の対応も出来るようになることが望ましいでしょう。

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