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振替休日と代休の違いについてと周辺論点

北 光太郎
2023.07.19

振休(振替休日)と代休は、どちらも休日出勤をした代わりに休日を取る制度です。

この2つの制度は、定義や割増賃金の計算が異なり、別々の制度として運用されています。

正確な運用が行われない場合、未払い賃金が発生する可能性があるため、労務担当者はこれらの制度を適切に理解することが大切です。

今回は振休と代休がどのような場合にどちらを利用すればいいのか、具体例を交えて解説します。

振休と代休の違い

振休と代休の違いは以下のように定義されています。

  • 振休:あらかじめ休日と定められていた日を労働日とし、そのかわりに他の労働日を休日とするもの
  • 代休:休日労働が行われたあとに、特定の労働日を休日とするもの

ここでは、それぞれの定義の違いを詳しく解説します。

振休の定義

振休とは「事前に休日と労働日を入れ替える」制度で、業務の都合上、予定された休日に勤務する必要がある場合に、事前に休日と労働日を入れ替えて勤務することをいいます。

たとえば、土日が休日の企業では、土曜日と木曜日を入れ替えるといった運用がされます。

振休の定義

このように、振休は労働日と休日を事前に入れ替えているため、本来休日の曜日に働いても休日労働にはなりません。

なお、事後に振休を適用することはできません。

休日出勤をした後に休日を取得する場合は「代休」となり、休日労働分の割増賃金が発生します。

代休の定義

代休とは「休日出勤をした代わりに休みを取る」制度です。

たとえば、金曜日に仕事が終わらず土曜日に出勤せざるを得ないために、代わりに木曜日に休みを取るなどのケースが代休にあたります。

代休の定義

振休とは違い、事前に労働日を休日入れ替えていないため、休日に行った労働は休日出勤として扱われます。

振休・代休の割増賃金の考え方

振休と代休を取得した際は、割増賃金が支払われる場合があります。

それぞれ割増賃金の考え方が異なるため、ポイントを押さえておきましょう。

振休の割増賃金

休日と労働日を入れ替える振休は、本来休日であった日に労働した場合でも原則、割増賃金が支払われません。

なぜなら、土日を休日としている会社で土曜日と木曜日を入れ替えると、土曜日は「平日扱い」となるためです。

ただし、振り替えによって1週間の労働時間が40時間を超えた場合には法定労働時間を超えるため割増賃金が発生します。

たとえば、週5日で1日8時間勤務の従業員が振休を翌週にした結果、その週の労働時間が48時間となった場合は、8時間分が割増賃金の対象になるということです。

振休の割増賃金

代休の割増賃金

休日出勤した代わりに別日を休日とする代休は、休日出勤した日の労働時間に応じた割増賃金の支払いが必要です。

ただし、代休は原則無給扱いとなるため、代休を取得した月は、1日の所定労働時間分の賃金を控除します。

代休の割増賃金

たとえば、1日(日曜日)に休日出勤をし、10日(火曜日)に代休を取得した場合、1日の8時間分は休日出勤として割増賃金が支払われます。

一方、10日の代休分は働いていないため、その分の賃金が控除されます。

具体例は以下のとおりです。

例)

休日出勤分

時給換算:1,500円
休日出勤:8時間
=1,500円×8時間×1.35=16,200円

代休控除

1,500円×8時間 = 12,000円

支給額

16,200円 – 12,000円 = 4,200円

休日出勤と代休控除

このように休日労働をした後に、代休を取得した月では、割増賃金分(4,200円)が支払われることになります。

なお、代休控除は月給者に行われる考え方です。時給で働く労働者には働いた分の賃金が支払われるため、代休控除の必要はありません。

振休・代休の周辺論点

ここからは振休・代休の周辺論点として以下の事項を解説します。

  • 振休・代休の半日付与
  • 積立代休の運用

振休・代休の半日付与

振休と代休の半日付与はそれぞれで考え方が異なります。

まず振休は、半日付与が認められていません。

なぜなら休日は、暦日単位で与えることが原則であるため、半日を振り替えて半日労働するという運用は認められていないからです。

一方、代休は就業規則において半日単位の取得を規定した場合は、半日の代休を付与することも可能です。 

たとえば、所定労働時間が8時間である正社員に、4時間の休日出勤をさせた場合、就業規則で半日付与する旨を定義していれば半日の代休を付与することができます。

ただし、短時間の代休を分割して付与するのではなく、1日分の所定労働時間に相当する代休が積み上がった場合は、暦日単位で付与することが望ましいでしょう。

積立代休の運用

企業によっては、代休を積み立てて月をまたいでも取得できる(積立代休)が運用されている場合もあります。

その場合、給与の締め日をまたいだ場合は、代休控除ができないため、休日手当の支払いが必要になります。

たとえば、休日に8時間労働した従業員が給与の締め日までに代休を取得しなかった場合は、8時間労働に割増賃金を加えた賃金の支払いが必要になるということです。

また、積立代休を運用する場合は、代休の取得期限を設けるとよいでしょう。

業務の都合上、どうしても代休を取ることができない場合もあるため、期限を設けなければ代休が残り続けてしまいます。

就業規則に代休の期限を規定し、期限までに取得できなければ消滅する旨を記載することが望ましいでしょう。

なお、企業側は代休がたまっている従業員に対し、取得を強制することは違法ではありません。

労働基準法第35条では、労働者に対し「週に1日、もしくは4週間のうち4日以上の休日を与えなければいけない」と定められているため、代休を取らせることは法律に基づいた行為だといえます。

振休・代休の就業規則

就業規則の規定についても、振休と代休で考え方が異なります。

まず振休は、就業規則に規定がないと運用することができません。 

振休の運用には以下の措置が必要です。

  • 就業規則に振替休日の規定を置くこと
  • 振替休日は特定すること
  • 振替休日は4週4日の休日が確保される範囲のできるだけ近接した日とすること
  • 振替は前日までに通知すること

このように、振休を導入する際は、運用ルールを全従業員に周知し、適切な労務管理を行いましょう。

一方、代休は、就業規則に規定がなくても取得させることができます。 

しかし、代休制度を設ける場合でも、取得条件や代休日の賃金について就業規則に規定することで従業員とのトラブル防止につながります。

制度を導入する際は、適切な運用ができるよう就業規則に規定することが大切です。

まとめ

振休と代休はどちらも休日出勤をした代わりに休日を取る制度です。

それぞれの違いは以下のとおりです。

振休代休
定義事前に休日と労働日を交換すること休日に労働した後、代わりに休日を取ること
要件振替日を事前に特定する休日出勤をした事実がある
割増賃金同じ週で振り替えた場合は割増賃金は発生しない。ただし週をまたがって振り替えた結果、法定労働時間を超えた場合は割増賃金が発生する。休日の労働時間に応じた割増賃金が発生する。ただし代休日が無給の場合は代休分の賃金が控除される。
半休認められない認められる
就業規則規定が必要規定の必要がない※規定する方が望ましい

労務担当者は振休と代休の違いについて理解し、適切な労務管理を行いましょう。

この記事を書いた人

北 光太郎
きた社労士事務所 代表

プロフィール

きた社労士事務所 代表
中小企業から上場企業まで様々な企業で労務に従事。計10年の労務経験を経て独立。独立後は労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力し、法人向けメディアの記事執筆・監修のほか、自身でも労務専門サイトを運営している

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