労働基準監督署が行う「書類送検」と「捜査」とは?

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KiteLab 編集部

労働基準監督署が行う「書類送検」や刑事事件で行われる「捜査」の進め方を解説します。

書類送検とは

①発端

労働基準監督署は通常、行政指導により企業を是正指導しますが、一定の場合に、刑事事件に切りかえて司法処分とするケースがあります。その発端となるべき事項として、
①行政指導等により、重大悪質と判断した場合で、かつ、一定の事由
②告訴告発
によるものです。

①行政指導により、重大悪質と判断した場合で、かつ、一定の事由

労働基準監督署は、「地方労働行政運営方針」と呼ばれる通達に基づき、行政指導の対象となる事業場をリスト化します。対象となった事業場において、法違反の様態が重大悪質と判断されるケースや、是正状況が芳しくなく、「最終是正督促状」を交付してもなお、是正がされない場合、行政指導による是正指導ではなく、検察官等に刑事的な処罰を求めるため、司法事件として捜査をします(労働基準法第102条)。

②告訴告発

告訴とは、被害を受けた労働者が、捜査機関に対し、犯罪事実の申告をして訴追を求めることをいいます。告発とは、被害者以外の第三者が、同様に、捜査機関に対し、犯罪事実の申告をして訴追を求めるものです。
(刑事訴訟法第230条・同法第239条)

 (1)告訴

告訴の事例として、次のようなものがあります。

使用者が、労働者に対して、支払うべき時間外手当等を支払わず、労働基準法第104条の規定により、労働基準監督署へ申告することがあります。通常は、労働基準監督官が、使用者に対して、行政指導により是正勧告及び是正指導を行うところ、使用者が是正に協力的でなく、任意による行政指導では解決不能なケースがあります。
その際に、労働者が行政指導を求めず、刑事罰的な処罰を求め、告訴を行った場合に、司法捜査へと切り替わることがあります。

(2)告発

告発の事例として、次のようなものがあります。
使用者が、労働者に違法な長時間労働を行わせ、長時間労働をさせられた労働者が、地域ユニオンに相談をする場合があります。その際、地域ユニオンの使用者への対応策として、労働基準監督署へ、行政指導による是正指導でなく、刑事罰を求めて告発を行うことがあります。

捜査等

刑法上、労働基準法に違反として立件するためには、構成要件、故意、責任をそれぞれ立証する必要があります。このうち、構成要件及び故意について解説します。

①構成要件

 構成要件とは、被疑条文を分解して、それぞれの要件が成立するかを、捜査をするものです。例えば、労働基準法第32条第1項では、「使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。」と規定されており、この条文を、下図のように分解をします。

使用者は労働者に休憩時間を除き 一週間について四十時間を超えて労働させてはならない

上記分解したそれぞれの要件について、立証をする過程が必要です。

②故意

刑法犯では、「故意」がないと原則として処罰されません。また、労働基準法には「過失犯」の概念がないため、刑法犯として立件するためには、故意を必ず立証しなければなりません。故意とは犯罪を犯す意思であり、結果の認識・認容等を指します。

③立証過程

上記の構成要件、故意を立証するために、労働基準監督官は証拠を収集します。証拠として、例えば、タイムカード、賃金台帳等の帳簿のほか、被疑者や参考人からの供述をもとにした供述調書等があげられます(刑事訴訟法第198条、同法第223条)。

これらの証拠収集は、原則として、被疑者・参考人の任意の協力にもとづいて行われます(任意捜査の原則)。ただし、相手方が任意捜査に応じない場合、証拠の滅失等の可能性がある場合には、裁判所の令状により、強制捜査を行うことがあります(刑事訴訟法第197条第1項等)。

④送検

③の立証過程を経て、所轄の検察庁へ一件書類を送致(書類送検)します。預け入れられた一件書類をもとに、検事が略式起訴又は正式裁判等によって処罰を決定するか、略式起訴の場合には、犯罪の成立の有無・量刑等を決定します。

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