2025年10月のトピック「教育訓練休暇給付金」

この記事でわかること
- 「教育訓練休暇給付金」の対象の休暇は、就業規則等で規定された休暇制度に基づく30日以上の無給の休暇であること
- 「教育訓練休暇給付金」の給付金額は、教育訓練1日あたり失業給付相当額であること
- 「教育訓練休暇給付金」は人材育成・リスキリングの推進や人手不足対策などに活用できること
社会保険労務士の西岡 秀泰です。
人材不足や働き方の多様化が進む今、従業員のリスキリング(学び直し)を後押しする制度が新たに始まりました。
2025年10月1日に創設された「教育訓練休暇給付金」は、無給で教育訓練を受ける従業員に対し、一定の給付金を支給する仕組みです。
今回は、この制度の概要と、企業が実務で押さえておきたい就業規則の整備ポイントを解説します。
2025年10月創設「教育訓練休暇給付金」
概要
2025年10月1日から、従業員の能力開発やリスキリング(学び直し)を支援するための「教育訓練休暇給付金」制度が創設されます。給付内容は、在職中の従業員が、教育訓練を受けるために30日以上連続した無給の休暇を取得した場合、失業給付(基本手当)相当額を支給するものです。能力開発やリスキリングのために離職を防止したり、教育訓練中の経済的負担を軽減する効果が期待できます。
対象従業員や給付金額
・対象従業員:雇用保険の被保険者(5年以上加入などの要件あり) ・対象の休暇:就業規則等で規定された休暇制度に基づく30日以上の無給の休暇 ・対象の教育訓練:学校教育法に基づく大学や教育訓練給付金の指定講座を有する法人などが提供する教育訓練 ・給付金額:教育訓練1日あたり失業給付(基本手当)相当額 ・給付日数:雇用保険の加入期間により90日(5年以上10年未満)・120日(10年以上20年未満)・150日(20年以上) など |
※詳細については、厚生労働省の「教育訓練休暇給付金のご案内」で確認ください。
なお、本制度は教育訓練のために自主的に休暇取得する従業員を支援することが目的であるため、会社が業務命令で休暇取得させる場合は支給対象とはなりません。ハローワークへの給付金申請も原則従業員が行います。
ただし、給付金を受けるには企業側の対応も必要です。また、従業員に制度内容を周知し、教育訓練のための休暇取得を支援することは問題ありません。
企業が対応すること
給付金制度を活用するために企業が最初にやるべきことは、就業規則や社内制度の整備です。給付金を受けるには「教育訓練休暇制度」が就業規則や労働協約に定められていることが前提となるため、休暇制度(取得要件や取得期間、給与の取り扱いなど)を定めて就業規則を改定したり、申請方法や復帰手続きなどを整備する必要があります。
また、制度を従業員に周知するために説明会を行ったり、長期の休暇を前提に代替要員の配置計画を作成するなど業務に支障が出ないように社内体制を整備したりすることも重要です。給付金申請の事務フローもあらかじめ決めておきましょう。
教育訓練休暇給付金の新設は、中小企業にとって人材育成を後押しする大きなチャンスです。IT技術やDXの進化や経済環境の大きな変化により会社員に求められる知識やスキルは変化し、転職や定年後の就業が一般的となる中、リスキリングの重要性が認識されつつあります。大企業を中心にリスキリングに取り組む企業が増える一方、中小企業ではリスキリングは進んでいないのが現状です。
リスキリングが進まない原因は費用や時間がないこともありますが、リスキリングを理解し社内で教育訓練を行う人材がいないことも大きいでしょう。従業員にとっても、本格的な教育訓練を受けるために仕事を離れれば経済的負担が大きくなります。
キテラボ編集部より
今回ご紹介した「リスキリング」「従業員の能力開発」「給付金」といった話題は、会社のルールブックである就業規則と深く関係します。これらの事柄は、企業が法令を守り、従業員が安心して働ける環境を整える上で、土台となる大切なポイントと言えるでしょう。とりわけ最近は、働き方に関する法律の変更や、人々の働き方が多様になっていることから、就業規則も定期的に内容を確認し、時代に合わせて新しくしていくことが重要になっています。
つきましては、この機会にぜひ一度、皆様の会社の就業規則が、現在の法律や社内の実情にしっかりと対応できているかをご確認いただき、もし必要な箇所が見つかれば、内容の変更をご検討されてはいかがでしょうか。
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