就業規則の電子申請とは?利用方法やAPI開放などの最新動向について
行政手続きのオンライン化は年々進んでおり、社労士が関与する領域においても2020年4月に特定の法人については一部の手続きで電子申請が義務化されました。本記事のテーマである就業規則の電子申請は2022年1月時点で義務化の対象ではありませんが、注目されつつあることから詳細や最新動向について解説いたします。
行政手続きの電子申請とは
現在、行政手続きにかかる事業者の作業時間の削減を目的に、行政手続きの電子化の徹底、電子申請の利用促進が進められています。社労士が関与する領域では、労働基準法、最低賃金法の届出等で電子申請が利用可能となり、2020年4月には特定の法人の事業所が社会保険・労働保険に関する一部の手続きを行う場合、電子申請が義務となりました。
電子申請のメリット
電子申請を利用することで、労働局、監督署、安定所等へ来庁することなく、24時間いつでも行政手続きが可能となります。また、大量の申請書類への記入も電子申請なら素早く対応できます。例えば、毎年提出する年度更新申告なら前年度の申請情報を取り込むことで変更と修正するだけで完了。入力チェック機能や計算機能があるので、記入漏れや記入ミスも申請前に確認することができます。
電子申請の方法
電子申請は、「e-Gov電子申請アプリケーションによる電子申請」と「API対応ソフトウェア・サービスを利用した電子申請」の2つの方法で申請が可能です。この記事では、「e-Gov電子申請アプリケーションによる電子申請」を中心に、解説していきます。
e-Gov電子申請で届出・申請可能な主な手続き
現在、e-Gov電子申請で届出・申請可能な主な手続きは以下の通りです。
- 労働基準法に定められた届出
- 時間外・休日労働に関する協定届(36協定届)
- 就業規則(変更)届出
- 1年単位の変形労働時間制に関する協定届 など
- 最低賃金法に定められた申請
- 最低賃金の減額特例許可の申請 など
- 健康保険・厚生年金保険
- 被保険者報酬月額算定基礎届
- 被保険者報酬月額変更届
- 被保険者賞与支払届
- 労働保険
- 継続事業(一括有期事業を含む。)を行う事業主が提出する以下の申告書
- 年度更新に関する申告書(概算保険料申告書、確定保険料申告書、一般拠出金申告書)
- 増加概算保険料申告書
- 継続事業(一括有期事業を含む。)を行う事業主が提出する以下の申告書
- 雇用保険
- 被保険者資格取得届
- 被保険者資格喪失届
- 被保険者転勤届
- 高年齢雇用継続給付支給申請
- 育児休業給付支給申請
2020年4月から特定の法人の事業所が社会保険・労働保険に関する一部の手続きを行う場合には、電子申請が義務化されました。詳しくは、特定法人に係る電子申請の義務化のQ&Aで確認することができます。
e-Gov電子申請の利用に必要な事前準備
e-Gov電子申請から電子申請を行う際には、e-Gov電子申請アプリケーションのインストールが必要です。利用に必要な事前準備を見ていきましょう。
アカウントの準備
- e-Gov電子申請を利用する際のアカウントを準備します。
- e-Govアカウント、Microsoftアカウント、GビズIDアカウントが利用可能です。
ブラウザの設定
- ブラウザソフトにポップアップブロックが設定されていたら、解除します。
- また、電子申請でアクセスするサイトを「信頼済みのサイト」に登録します。
e-Gov電子申請アプリケーションの設定
e-Gov電子申請アプリケーションをインストールします。e-Gov電子申請アプリケーションは、e-Gov電子申請「利用準備」のページからダウンロードが可能です。
※これまで、労働基準法、最低賃⾦法、賃⾦の⽀払の確保等に関する法律に基づく届出などの電子申請については電子署名・電子証明書の添付が必須でしたが、2021年4⽉1⽇から添付が不要となりました。
※社会保険労務士・社会保険労務士法人が労働基準法、最低賃⾦法、賃⾦の⽀払の確保等に関する法律に基づく届出などの電子申請について提出代⾏を⾏う場合は、提出代⾏に関する証明書(社会保険労務⼠証票のコピーを貼付したもの)をPDF形式などで添付する必要があります。
e-Gov電子申請の申請手順
続いて、実際の申請手順について見ていきましょう。
ログイン
事前に取得したログインアカウントでマイページにログインします。
電子申請の手続きを検索
「手続検索」から検索キーワードを入力し、検索してください。
検索結果の中から、該当する手続きをクリックしてください。
基本情報、申請様式などの記入
- e-Gov電子申請アプリケーションが起動するので、基本情報、申請様式などを記入していきます。
- 申請案件の手続終了の確認
- 申請が完了すると、「申請案件一覧」から提出後の処理状況の確認や、電⼦公⽂書のダウンロードができるようになります。
詳しい手順については、電子申請に関わるパンフレットで確認することができます。
e-Gov電子申請のこれから
2021年3⽉には36協定届の本社一括届出の要件緩和に伴い「一括届出事業場一覧作成ツール」が刷新、2021年4⽉1⽇からは電⼦署名・電⼦証明書が不要となり、新様式による届出も可能となっています。また、2021年10月には労働基準関係の電子申請APIドキュメントの第一版が公開となりました。すでに公開されている社会保険関連の分野では、APIに対応したサービスが多く存在していますが、労働基準関連の分野でも電子申請APIに対応したソフトウェア・サービスが出てくることが期待できます。
このような流れから、行政手続きのオンライン化がさらに推し進められ、利便性が高まっていくと考えられます。
(補足)APIとは
API(Application Programming Interface)とは、e-Gov電子申請のシステムが提供するデータや機能を、外部のソフトウェアから呼び出して利用するための手順やデータ形式などを定めた規約のことです。この規約に従うように作られたソフトウェアは、e-Gov電子申請と申請データのやり取りを直接行うことができるようになります。
電子申請API対応のソフトウェアを利用することで、申請データの作成から、申請、公文書取得までの全ての機能をソフトウェア上から行えるようになります。これまでの電子申請で必須だったe-Gov電子申請アプリケーションでの申請操作は不要となり、より効率的な申請・届出業務が行えるようになると考えられます。