シニア人材活用のポイント
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シニア人材を取り巻く現状
「人生100年時代」「生涯現役時代」といわれる今、はたらく意欲のあるシニア人材が増加しています。さらに、高年齢者雇用安定法の改正も後押しとなり、シニア人材に注目が集まっています。
令和4年「高齢社会白書~高齢期の暮らしの動向~」:内閣府
上記統計では、「75歳くらいまで」「80歳くらいまで」「働けるうちはいつまでも」の回答が全体の約37%、収入のある仕事をしている者に至っては約63%と、シニア人材の就労意欲の高さを示しています。
一方、労働人口の減少や高齢化が避けられない中、目前に迫る「人材不足」といった課題に対し、いかにシニア人材を戦力として活用していくかが、多くの企業にとって重要なテーマとなっています。
令和4年「労働力調査」:総務省統計局
労働力人口(15歳以上人口のうち、就業者と完全失業者を合わせた人口)は2022年5万人の減となっていますが、55歳~64歳で27万人増、65歳以上でも1万人増とシニア人材が労働力を下支えしている現状です。
本記事では、シニア人材を取り巻く雇用の現状やシニア人材活用によるメリットや留意点、企業がシニア人材活用を進める際に考えるべきことを解説いたします。
※本記事では、主に60歳以上の方を対象に「シニア人材」と呼称させていただきます
シニア人材活用のメリットと留意点
シニア人材活用のメリット
企業がシニア人材活用を進めるにあたってのメリットを紹介します。
人材不足の改善につながる
令和4年「中小企業白書~雇用の状況~」:中小企業庁
上記5業種すべてにおいて、従業員を「不足」と感じている企業が「過剰」と感じている企業を上回っており、特に中小企業において人材不足感は顕著です。シニア人材による人材不足の緩和・改善が期待されています。
豊かな人生経験を活かせる
業務経験、人生経験ともに豊富なシニア人材が、若手・中堅社員に対する「メンター※」という役割を担うことがありますが、若手・中堅社員とシニア人材が互いに「メンター※」となる「相互メンタリング」という取り組みも注目されてきています。
例えば、業務スキルや精神的なバックアップに関してはシニア人材が行い、ITスキルや直近のトレンドは若手・中堅社員が伝える・・・といった内容です。
※メンター・・・指導者、助言者のこと
高度なスキル・技能の蓄積がある人材も多い
特に製造業、建設業では「技術承継」が待ったなしの課題であり、技能を持ったシニア人材の「ノウハウ・スキルの共有化、見える化」に取り組むケースも多くみられます。
※参考:令和4年:一般社団法人 日本歯車工業会「高齢者の活躍に向けた ガイドライン」
意欲的な人材が多い
定年後自ら望んで就労しているケースが多いため、離職率は低い傾向にあります。
(上記「シニア人材を取り巻く現状」参照)
助成金が活用できる
シニア人材雇用やシニア人材の雇用管理改善を後押しする助成金があります。
1)特定求職者雇用開発助成金(シニア人材雇用)
厚生労働省:「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」
※なお、「特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)」が廃止となり、(特定就職困難者コース)において、65歳以上の方を新たに対象とします。
2)65歳超雇用推進助成金(シニア人材の雇用管理改善)
(厚生労働省:「65歳超雇用推進助成金」)
※なお、「65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース)」については、申請受付期間の考え方や予算額上限を超える場合の申請受付停止等に注意が必要です。
シニア人材活用の留意点
ここでは、シニア人材活用の留意点についてご紹介します。
健康、体力面をより配慮した環境整備が必要
加齢とともに労働災害リスクが高まる傾向があるため、シニア人材に対する安全配慮をする必要があります。そこで参考にしたいのが「エイジフレンドリーガイドライン」です。
厚生労働省:「エイジフレンドリーガイドライン」の中で、事業者に求められる事項として
1)安全衛生管理体制の確立等
2)職場環境の改善
3)高年齢労働者の健康や体力の状況の把握
4)高年齢労働者の健康や体力の状況に応じた対応
5)安全衛生教育
の5項目があります。
価値観の固定化、新しいものへの順応性が低い傾向
若年層、中堅層に比べデジタル対応が困難なことや、「自分が若いころは・・・」といった経験談や武勇伝をついつい話してしまうことも少なからずあるようです。
会社がシニア人材に対して、リスキリング(学び直し)やマインドセット(定着している物の見方、考え方)の進化や転換を促していくことで、従業員個人のみならず会社組織全体の活性化にもつながります。
人事評価制度、賃金制度の整備を行う必要がある
シニア人材にモチベーション高く働いてもらうためには「多様な価値観、働き方」に対応できる人事制度を構築していく必要があります。
例えば従前どおりの役割・勤務時間を継続する従業員、その中でもマネジメント層を担うのかオペレーション部門を担うのか、一方、役割・勤務時間共に軽減させる従業員など複数のコースを用意し、選択してもらうことで労使双方が納得して定年後(60歳以降)の雇用契約を結ぶことができます。
法律(高年齢雇用安定法等)の理解
直近では高年齢雇用安定法の改正があり、65歳までの雇用確保措置に加え70歳までの「就業機会確保措置(努力義務)」が定められました。
参照:厚生労働省:「改正高年齢者雇用安定法が令和3年4月から施行されました」
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